工夫・技術
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 01:16 UTC 版)
21世紀現在の兵器の装甲は、加害主体となる敵弾の運動特性・物性や、防護部位ごとの被弾頻度や脅威度の期待値、さらに利用可能な装甲技術での重量、製造コスト、加工容易性、性能の確実性、保守容易性、環境耐性と低劣化性、材料入手性、安全性などを総合的に考慮して選択される。 鋼は代表的な装甲の材料であるが、一般に炭素を豊富に含んだ鋼鉄は硬いが脆くなる。炭素を少なくすれば柔らかくなり硬度は失われるが粘り強くなる。また、炭素以外にも多くの元素を鉄に添加することで多様な合金が作られている。 敵弾の運動特性と物性として考慮すべき最も顕著なものが、20世紀末に登場したAPFSDS弾やHEAT弾のような弾種の侵徹原理である。超高速で装甲に衝突した金属製の長い弾芯が、超高圧下で装甲と共に流体化し孔外に流出しながら細い孔を穿ってゆく過程を分析した上で、それを無効化する技術がいくつか開発され装甲に使用されている。 直接の防護性能には無関係であるが、多くの場合装甲によって左右される兵器の外形がステルス性能に大きく影響するため、防護性能や運動性能と共に装甲の形状も装甲設計での重要な要素の1つとなっている。 以下に単純な工夫から高度な技術まで示す。 モノコック構造 過去には兵器の外枠となる構造体とは別に装甲だけが付加されたこともあったが、全体の重量に考慮すれば装甲が車体や船体の構造体も兼ねた方が軽くなるため、装甲だけを付け加えることは少なくなり、モノコック構造がとられる事が多い。 装甲厚の最適な配分 これらの装甲様式では、素材が同じであれば単純に装甲板が厚くなるほど強度が増す。しかし同時に装甲による重量も増えるため、移動体に装甲を施す場合には運動性、つまり移動速度とのバランスも考慮して、自ずと装甲の量には限界が存在する。これらの問題に関しては、一様に全体を装甲するよりもより打撃を受けやすい部位を集中的に装甲を厚くしそれ以外の装甲を薄くする事で総合的な防護能力を向上させるという思想がある。 戦車の装甲を例に挙げれば、戦車砲同士による撃ち合いで最も被弾しやすいのは正面装甲である。次に側面であり、後部や上面、下面は被弾が比較的少ない。 このため、全体に使用できる装甲の総重量を100とすると、正面に30、左右側面にそれぞれ20ずつ、残る後部と上面、下面には10ずつといった割合で、装甲の厚みに変化をもたせる事で車体全体に均一に16-17程度の同じ厚みの装甲を施すよりも、同じ重量でより耐弾性に優れた戦車が作れる。
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