小児甲状腺がん
別名:小児の甲状腺がん、小児甲状腺癌、小児の甲状腺癌
英語:pediatric thyroid cancer、thyroid cancer in children
小児に発生する甲状腺がんのこと。甲状腺がんは他のがんと比べても若年者の発症が多い傾向があるが、小児甲状腺がんは本来稀な疾患であり、患者は100万人に1-3人程度だとされている。しかし、放射線治療や放射性ヨウ素の摂取などによって、小児期に甲状腺が放射線に曝された場合、小児甲状腺がんの発症率が高まることが知られている。
小児甲状腺がんは、成人の甲状腺がんとはいくつかの点で性質が異なっていることが知られている。小児の場合、触知などにより甲状腺結節が発見されると、甲状腺がんであるリスクが成人よりも高いといわれている。また、腫瘍の大きさや肺に転移する割合なども、成人の甲状腺がんに比べて高いことが知られている。
小児甲状腺がんは、甲状腺に放射性ヨウ素が蓄積することが発症の要因になりうるといわれている。甲状腺はヨウ素を取り込んで成長ホルモンなどを分泌する器官であり、成長過程にあり機能が高い小児の甲状腺には、特にヨウ素が蓄積しやすい傾向があることが知られている。また、放射線治療などで甲状腺が直接被曝した場合に、甲状腺がんを発症した例も知られており、1950年代に扁桃炎や白癬などに対する頸部放射線療法が行われた結果、甲状腺がんの発生が増加したことが確かめられている。
1986年にチェルノブイリ原発事故が起こった後、高濃度汚染地域では、事故から4-5年後に小児甲状腺がんを発症する小児が増加したことが報告されている。特に、事故当時に5歳以下だった小児での発症率が高く、汚染された大気や飲食物などを摂取したことが発症のきっかけになったと考えられている。
2013年に福島県が約23万人を対象として行った調査では、甲状腺がんやその疑いがあると診断された人数は59人であった。福島県は診断結果について、被曝の影響はないと発表した。
関連サイト:
県民健康管理課 - 福島県
小児甲状腺癌
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/19 11:04 UTC 版)
「チェルノブイリ原発事故の影響」の記事における「小児甲状腺癌」の解説
UNSCEARによれば、ヨウ素131で汚染されたミルクに対する迅速な対策に欠けていたために、一般市民の甲状腺に大量の被曝をもたらすことになり、このことが、事故当時、子供や青年であった人々に観測された6,000件以上の甲状腺癌の大部分を導いたとしている。甲状腺癌患者への治療は、短期的な有効性にもかかわらず、長期的な生活の質 (QOL) は生涯にわたる甲状腺ホルモンの補充療法の必要性によって低下し、将来的な医療支援が必要になる。 1999年、チェルノブイリ笹川医療協力プロジェクトによる「1991~1996チェルノブイリ原発事故被災児の検診成績」が、「放射線科学」第42巻第10号-12号(1999年9月-11月)に掲載された。その中には、「甲状腺結節に注目してその発現頻度をまとめてみると、<中略>いかに早く小さな結節をみつけても、がんは周囲のリンパ節に既に転移していることが多く、早期に適切な診断が必要である」との報告が見られる。 2011年、アメリカ国立衛生研究所の機関であるアメリカ国立癌研究所を中心とした国際的な研究チームは、子供の被曝は大人が被曝した場合に比べて甲状腺癌に罹るリスクが高く、依然として甲状腺癌の発症リスクが減少傾向に転じていないことを報告した。
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