実用性と問題点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/03 06:22 UTC 版)
柳田理科雄の著書「空想科学読本」などで、地底戦車の構造上の欠陥や問題点についていくつか指摘されている。 岩盤の掘削のため、ドリルが回転しながら前進する際、掘削時の抵抗がそのままバックトルクとなるため車体が逆方向に回転してしまう。例えるならテールロータを失ったヘリコプターのようにドリルと車体が互いに逆回転するため推進力が失われてしまう。これらの問題は既に前述の「未来の地下戦車長」で提起されており、「未来の~」ではその解決策として3連ドリルを装備した改良型を登場させている。 第2の問題として、「轟天号」や「マグマライザー」等、いくつかのメカは見た目のバランス上から車体よりもドリルのほうが小さくデザインされているものがあり、掘削した穴を通過できない。これは「轟天号」をデザインした小松崎や演出の円谷英二も承知しており、あくまでも映像表現の一部と割り切っている。 第3の問題は掘削した土を後方に排出する方法として車体側面にキャタピラや後方向けの噴射装置を設ける、等の案が用いられているが、掘り進んだ部分が前から送られた土砂で再び埋まってしまう危険性がある。「未来の地下戦車長」では車体の後方を流滴型にすることで負圧を発生させ後方に土砂を吸い出す、との描写があるが、実際に進行速度を勘案した場合、負圧の発生に至らない可能性が高い。 第4の問題として、地盤の圧力のため、土砂をそのまま掘り進んで行っただけではトンネルの強度は不十分であり、落盤事故が発生する危険がある。現実のトンネル工事では掘削後速やかにコンクリートや鉄骨による補強が行われる。 第5の問題として、岩盤は熱を通しにくいため、ドリルが岩盤を削った際の摩擦熱とエンジンから発生した熱を地上の乗り物と異なり、空気中に逃がせない。この対策として、「轟天号」はドリルの先端に艦体の冷却用に瞬間冷凍ガス噴出装置を装備してある(作品中では怪獣との対決用武器として使用)が、熱力学上、冷却ガスを発生させるためには熱交換が必要であり、さらに高熱が発生してしまい問題は解決しない。 以上に示した通り、実際のトンネル工事などの作業は「掘削」「排出」「補強」の工程を並列で行っており、映像作品に見られるような、時速数10km以上の高速での進行は物理的に不可能であるといえる。なお、ロードヘッダ(後述)の最大の掘削作業実績は1時間あたり200立方メートルであり、時速換算で8m相当となる。 構造上の問題以外では、緊急時における乗員の脱出や救助に非常な困難が伴うであろうことが予想される。
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