実戦部隊からの評価
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/10 05:38 UTC 版)
前述の通り各所からの評判の非常に高かった本機であるが、五式戦闘機を称える顕著な例としては、明野教導飛行師団の檮原秀見中佐が五式戦を操縦し、模擬空戦において2,000馬力級の四式戦闘機3機を相手に有利に戦い、その上航空本部に五式戦1機は四式戦3機以上の価値があるから全力生産を行えとの進言を行ったとする説がある。常陸教導飛行隊でも四式戦と五式戦を比較し、特に上昇力、旋回性能など、文句なく五式戦が上と結論している。 五式戦を装備した飛行第59戦隊は、P-51となら対等、F6Fなら問題無し、F4Uならカモと評した。第244戦隊長小林照彦少佐などは「五式戦をもってすれば絶対不敗」とまで言ったという。 実際の操縦者たちからも、好意的な証言が多く見られる。 飛行第244戦隊第1中隊長生野文介大尉は弾切れの状態で8機のP-51と交戦するなどしたが、五式戦闘機でP-51に撃墜されないことについては絶対の自信が有ったと証言している。 「義足のエース」として著名な檜與平少佐も、稀代の名機であり、旋回性が良いため無理をしない限り絶対に落とされる機体ではないと評したほか、方向舵ペダルの形状から自身の義足を改造する必要はあったものの操縦は容易で性能は十分に満足できるものであり、P-51に旋回性能で勝るのみならず、中高度であれば速力でも劣らなかったと言う。エンジンについては檜 (1985) では整備が楽で100%近い稼働率を誇り信頼性が高く、全開での連続運転にも大いに信頼がおけ、三式戦闘機とは天地の差である、せめて半年前にこの機体が出来ていれば戦局も変わっていたのではなど、賛辞を惜しまない。檜 (1999) では信頼性100%稼働率100%であるとまで記している。 前述の稲山大尉は故障が少なく操縦性能も良好で初心者でも乗りこなせるのが素晴らしく、当時の陸軍戦闘機の中で最も旋回性能が良かったとするが、前述の縦安定性の問題のほか、舵が軽すぎて頼りなかった点も指摘している。他にも上昇力があり飛行はスムーズで三式戦闘機より軽く感じるなどの証言がある。 一型丁と比較すれば高速化され、さらに軽量化と大馬力化が実現されており、稼働率も上昇した。実戦部隊はこれを強く歓迎し、五式戦闘機が配備された航空隊の士気は非常に上がったとされる。 航空審査部は1945年2月に不時着したP-51Cを鹵獲し、模擬空戦に使用している。渡辺 (1999) によれば、航空審査部が行った模擬空戦では、五式戦闘機にとって決して分が良いとは言えなかったようである。なお黒江の駆るP-51Cと三式戦闘機の模擬空戦を目撃した檜は、P-51に対しては三式戦闘機では全く相手にならなかったと著している。 その他外国の文献では、ウイリアム・グリーン『第二次大戦の世界の軍用機』第三巻に、その性能はF6Fを上回り、P-51に匹敵するもので、即席の作品としては最も成功したものの一つである、などと紹介されているという。
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