存在と生産
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/20 22:44 UTC 版)
サマリウムは地殻中において40番目に多く含まれる元素であり、その濃度は平均およそ8 ppm(百万分の1)である。その存在量はランタノイドの中では5番目であり、スズのような元素よりもありふれた元素である。土壌中のサマリウム濃度は2から22 ppmであり、海水中の濃度は0.5から0.8 ppt(1兆分の1)である。環境中のサマリウムの移動はその化学的状態に強く依存し、非常に不均一である。土壌中においてサマリウムは砂粒子の表面に付着しやすく、間隙水(土壌中において砂の粒子の間で保持される水)中のサマリウム濃度と比較して200倍以上も高く、粘土質な土壌においては1000倍におよぶ。 サマリウムの単体は自然には産出しないが、他の希土類元素と同様にモナズ石やバストネサイト、セル石(英語版)、ガドリン石、サマルスキー石など多くの鉱物中に含まれる。サマリウム源として商業的に利用されるものの大部分はモナズ石およびバストネサイトであり、モナズ石中のサマリウム濃度は最高2.8% である。サマリウムの埋蔵量は全世界でおよそ200万トンと推定されており、それらの大部分は中国、アメリカ合衆国、ブラジル、インド、スリランカおよびオーストラリアに存在している。2001年頃のサマリウムの年間生産量は酸化サマリウムとしておよそ700トン。サマリウムの原料となる希土類鉱石の2014年の生産量は中国が最も大規模で年間9万5000トンであった。それにアメリカの7000トン、インドの3000トン、オーストラリアおよびロシアの2500トン、タイの1100トンと続いており、その他マレーシアやベトナムでも小規模な生産が行われている。2012年における酸化サマリウムのキロ単価は62ドルであり、ランタノイド酸化物の中でもセリウム、ランタンに次いで安価な元素である。 サマリウムをおよそ1%含有する希土類元素混合物であるミッシュメタルが長い間利用されて来たのに対して、比較的純粋なサマリウムはイオン交換法や溶媒抽出法、電気化学的析出法などによって近年単離されるようになったばかりである。金属サマリウムは、しばしば塩化サマリウム(III)を塩化ナトリウムもしくは塩化カルシウムとともに溶融塩電解することによって得られる。サマリウムはまた、酸化サマリウムを金属ランタンで還元させることによっても得られる。この生成物にはランタンが含まれるため、サマリウムの沸点が1794 °C、ランタンの沸点が3464 °Cであることを利用して蒸留によって分離される。 サマリウム-151はウランの核分裂反応によって生成され、その生成割合は全分裂反応の内のおよそ0.4%である。それはまたサマリウム-149の中性子捕獲によっても生成され、原子炉の制御棒に加えられる。そのため、サマリウム-151は使用済み核燃料および放射性廃棄物に含まれる。
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