堆積物研究
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/18 23:17 UTC 版)
研究の歴史は浅く、日本では1983年日本海中部地震を契機として始まった。1980年代後半以降、多くの研究者によって精力的な研究が行われ、知見が蓄積されている。堆積物の解析とは、年代特定と津波規模の特定が主目的となり、年代を特定するために古生物学、考古学の視点、堆積物形成のプロセスを理解するためには地質学、地形学、地球物理学、津波工学、堆積学、流体力学などからの複合的視点が必要である。 過去数千年間の歴史に残っていない津波を知るためには、近代的地震観測が行われた以降の地震や、発生直後の調査によってどの様な堆積が行われたのかを知ることが重要で、陸上での発掘やジオスライサーによる堆積地層サンプルの採取が行われる。 津波による堆積物と判断するための根拠は大きく分け下記の5つであるが、全ての堆積物に適用できる基準は存在していない。 砂層の分布範囲が広い。 歴史記録と年代が一致する。 特徴的な堆積構造がある。(礫の整列方向) 地殻変動を伴う。 特徴的な構成粒子を伴う。 これらのうち、複数の組合せ或いは単独により判断が行われる。更に、堆積物中の水溶性イオンの分析により津波浸水域であるかの判別を正確に行う事が可能である。 その結果、蓄積されたデータを多角的に利用したシミュレーションを行い、発生した津波の規模(波高、流速、遡上範囲)から地震の規模を明らかにすることで、減災・防災に役立てる事が可能になる。日本においては、南海トラフ巨大地震の被災地域(西日本)では津波の古記録が多く残るのに対して、古文書があまり伝わっていない北海道・東北地方の津波発生史を解明するために有力な手段となっている。 解析を行う上での課題とは、 年代決定には主に放射性炭素年代測定法が用いられるが、堆積物中の遺骸が形成された年代と津波の発生年代は同じであるとは限らない。 堆積後に気象現象による洪水、高波、生物の活動、人間の経済活動による破壊などがあり攪乱される。 津波由来であることの判断は、台風や洪水などの可能性を否定し消去法で行われている。
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