国鉄長期債務償還とその破綻
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/10 00:55 UTC 版)
「日本国有鉄道」の記事における「国鉄長期債務償還とその破綻」の解説
「日本国有鉄道清算事業団」も参照 分割民営化によって処理すべき債務は、最終の国鉄長期債務25兆0600億円のほか、日本鉄道建設公団債務および本州四国連絡橋公団債務の国鉄負担分、北海道・四国・九州の各新会社に対する経営安定化基金原資を合わせた31兆4500億円に上った。さらに民営化にともなう年金負担などの将来費用5兆6600億円を加えた37兆1100億円について、国鉄清算事業団と新幹線鉄道保有機構、新会社6社(JR東日本、JR東海、JR西日本、JR貨物、鉄道通信、鉄道情報システム)が承継した。このうち新会社が5兆9300億円、新幹線鉄道保有機構が5兆6300億円を引き継ぎ、残る6割に相当する25兆5200億円について、国鉄清算事業団が引き継いだ。 国鉄清算事業団承継の長期債務償還には、清算事業団に移管された不要の旧国鉄用地の売却益(見込み額7兆7000億円)、JR株式の売却益など(同1兆1,600億円)、新幹線鉄道保有機構からの貸付金収入(同2兆8,800億円)を充てるとしていたが、当初から13兆7,700億円は財源不足として国民負担とする計画だった。 巨額の債務に対し毎年約1兆円の支払い利息が発生したため、政府は1987年(昭和62年)から年間数百億 - 2,000億円程度の利子支払い補助金を拠出したが、株式市場の低迷および土地価格の下落で、バブル景気時の見込みはもとより、民営化以前から問題となっていた支払い利息分を超える収入すら得ることができずに毎年多額の損失を計上。さらに借り換え資金の調達額の増加に伴う新たな利払いも増えたために、1996(平成8)年度には1日あたり24億円の支払い利息が新たに発生する状況に陥った。 このため、元本の処理すらできないまま債務総額は28兆3,000億円に膨張して償還スキームは事実上破綻し、国鉄清算事業団は1998年(平成10年)に解散した。 結局、償還不能となった債務のうち、政府保証付債務24兆2,000億円は、1986年(昭和61年)および1988年(昭和63年)の閣議決定 に基づいて1998(平成10)年度の国の一般会計に繰り込まれ、郵便貯金特別会計からの特別繰り入れ(2002〈平成14〉年度まで)、たばこ特別税収、一般会計国債費などを財源とする国民負担で処理することになった。政府保証付国鉄長期債務残高は、民営化20年後にあたる2007年(平成19年)3月末には20兆9,964億円、民営化25年後の2012年(平成24年)3月末には18兆6,432億円、民営化30年後の2017年(平成29年)3月末には17兆6,570億円 であった。 また年金等負担分4兆1,000億円については国鉄清算事業団の土地、株式などの資産を承継した日本鉄道建設公団が、特例業務として資産売却収入と国庫補助金で負担することになった。のち2003年(平成15年)の日本鉄道建設公団の独立行政法人化に伴い、現在は独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が負担を継続している。
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