回転ドア事故
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 07:11 UTC 版)
「六本木ヒルズ森タワー」の記事における「回転ドア事故」の解説
2004年(平成16年)3月26日午前11時ごろ、大阪府から母親と来訪していた6歳の男児が、タワー正面入口にある自動式の大型回転ドア(自動回転ドア)で、閉まりかけているドアに駆け込んだことで、ドアと枠の間に上半身が挟まれるという事故が発生。ただちに救出されたが、間もなく死亡(圧死)した。 本来ならば、ドアに備え付けられている赤外線センサーが感知して急制動する仕組みが備わっているが、ドアの効率を優先させた森ビル側が、頻発する急制動を抑制させるため検知範囲を狭めさせ、ドアの回転速度を速めるように、製造メーカーの三和タジマ(三和シヤッター工業関連会社)に要請し、それに応じていた事が事故直後に明らかとなる。 また風圧への対策から、部材をアルミニウム骨格から鉄骨に変え、見栄えを良くするため、表面にステンレスを貼り付けていたことから、本来1トンであった回転部の重量が3倍近い2.7トンに増加しており、回転速度を上げていた影響も相まって、急制動が作動してから完全停止まで、慣性で25cmも動くようになっていた。 そして直近まで、各地のビルなどに在る自動回転ドアにおいても、子供が負傷する事故が断続的に起きていたことも明らかとなり、エレベーター(昇降機)のような公的な規制が無かった「自動回転ドアの安全性」を見直す動きが広まった。その結果、横浜ランドマークタワーなど多くの大型ビルの回転ドアで事故が多発していた事が判明し、この事故を契機に、回転ドアを停止(閉鎖)したり、回転ドアを廃止して「引き戸式の自動ドア」に置き換える動きが続出した。 森タワーがオープンしてからこの事故までの1年弱の間に、回転扉に子供が挟まれる同様の事故が多発していたが、簡易的な対策しかなされていなかった。 この事故は当時都内の注目スポットとして脚光を浴び、不特定多数で多くの来訪者がいた六本木ヒルズの設備で犠牲者が出た事からセンセーショナルに報道された。死亡事故は刑事訴訟で森ビル側の管理過失および三和タジマの製品製作上の過失が認定され、森ビル側が遺族に損害賠償金約7,000万円を支払うことで、示談が成立している。 この事故に関して立教大大学院教授の福田秀人は、死亡事故以前より32回の事故がある事を知っていたが、事故後に産経新聞へのコメントとして、今回の事故も「危機管理の専門家ならだれもが知っているハインリッヒの法則に類似している」という要旨を述べ、事故後に事故報告をすることの大切さを投げかけている。 事故原因究明を目的とするドアプロジェクトを設立した畑村洋太郎は、センサーに頼った制御を危険だとして、扉の軽量化 や接触時に扉が退避する構造により、本質的な安全を確保する必要があるとしている。また誤停止を避けるため、事故防止用の赤外線センサーの死角を拡大していた事も事故原因の一つである。 ヨーロッパでは、ホテルや商業施設などで日本よりも回転ドアが普及しているが、そもそも安全対策のために、回転ドアにおける扉の軽量化が図られている。
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