喫煙の有害性に関する歴史
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/22 09:03 UTC 版)
煙草を吸うことで、一時的に疲労や苦痛が緩和されることから、古来から煙草は薬草とする場合が多かった。しかし同時に、喫煙者の様子や、煙草の常習性などから、喫煙は薬ではなく毒ではないかという認識が存在した。例えば、ドイツの哲学者のゲーテは「喫煙にはひどい無作法、無礼な非社会性がある。喫煙者はあたり一帯の空気を汚し、喫煙したくない、社交性のある、普通の優しい人間を窒息させる……」と手紙に記している。日本でも面山和尚など、何人もの仏教僧侶や医師が煙草の害、受動喫煙の害などを報告している。スコットランド及びイングランドの国王ジェームズ1世は喫煙を「肺に危険な風習」、そして煙草の煙を「地獄から立ち上る業火の煙」と表現、煙草に重税をかけた。 1900年、生命統計学者らが肺癌の増加を指摘(喫煙と疾患の関連を示唆した最初とされる)[要出典]。その後さまざまな研究が行われ、たばこやたばこ煙の成分が分析され始めた。やがて臨床的・病理学的・疫学的に、たばこの人体への影響の研究が進み、1930年には肺や循環器疾患の発症率や死亡率の上昇が指摘された。その後もさまざまな国・研究機関でたばこの研究は増えていき、ドイツではナチス統治下で、またアメリカ合衆国では1938年ごろ生物学者レイモンド・パール(Raymond Pearl)が、たばこは健康に悪影響を及ぼすと発表している。 1939年から1963年の間に、肺癌に関してだけで29の逆向き研究が行われ、1952年-1956年の疫学研究の発表以降、喫煙と肺癌の関係が特に注目されるようになり、1950年代から1960年代の間に医学界や各国政府 のコンセンサス「喫煙は、特に肺癌や心臓血管疾患に関して健康を脅かす」が発表された。リーダーズ・ダイジェスト誌も、喫煙がいかに公衆衛生に害を及ぼすかを示すことによって喫煙率を減少させるキャンペーンを始めた。 1954年初頭、たばこ産業の代表者らは、喫煙と健康の問題研究を後押しする目的で、「たばこ産業研究会」(Tobacco lndustry Research Committee/TIRC)を設立し、研究に積極的に資金提供・情報収集を行い、喫煙が健康を害するとの科学的な証拠はないと主張した。 以前と比べると禁煙活動が進んだが、世界保健機構(WHO)は2008年時点で、「世界各国で喫煙による死の予防が不十分である」と表明している。また、同機構は、「たばこにより世界全体で毎年540万人が死亡している」と報告している。 2017年11月26日よりアメリカ連邦裁判所は、タバコ会社大手であるアルトリア、R.Jレイノルズ、フィリップモリスUSAなどに対し、タバコの健康への有害な影響について告知広告を出すように命令を下した。約1年間テレビCM、新聞により告知広告が行われている。 その中で、平均で1日に1200人のアメリカ人が喫煙により死亡していること、殺人や自殺、交通事故による死、エイズや薬物乱用、アルコールが原因の死などを全部合算した数よりも多くの人が、喫煙により死亡していることを明記するように求めている。 日本でも現在では、受動喫煙による死者が年間15000人と推定され(厚生労働省)、ガンや心筋梗塞、中耳炎や虫歯などの口腔の病気、不妊や流産などの原因になることが指摘されている。 「日本の喫煙」も参照
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