医学界
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/14 04:47 UTC 版)
医学界からは、この映画がミスリーディングであり虚偽的であるとの批判が多く集まった。マウントサイナイ医科大学産婦人科教授のリチャード・バーコウィッツは、この映画が「事実と異なりミスリーディングでありフェアではない」と述べている。イェール医科大学のジョン・ホビンズも「専門的にはいかさま」の部類で、ひとを欺くために特殊効果を駆使しているという。ホビンズが指摘するのは、映画において初めのうちは超音波の映像がゆっくりと流されていたのに、手術用具が胎内に挿入されるや「胎児がおびえてのたうちまわる」印象を与えるために、映像のテンポがスピードアップするからである。また「叫び」というタイトルにもホビンズは疑問符をつける。「胎児はほとんどの時間を口を開けたまま過ごす」ことを考えれば、この映画の「叫び」もその延長である可能性があるし、作中のぼやけた超音波画像上で「口」だとされている部分も、実際には胎児のあごと胸のあいだの空間ともみなせる。ヴァージニア大学小児科の学科長であるエドワード・マイヤーは、12週の時点では、胎児の脳は痛みを感じるほど十分には発達していないと証言している。ニューヨーク病院の小児神経科の長であるハート・ピータースンもやはり「12週の胎児が不快を感じるという考えは誤りだ」と述べている。 胎児の発達に関する専門家は、ナサンソンが映画において強調したのとは反対に、胎児が危険を感じたり、何かを目的とした動きをすることはないと主張している。ジョンズ・ホプキンス医科大学の神経生物学者デイビット・ボディアンは、12週目の胎児が痛みを感じるということに医学的な証拠はなく、手術道具のような外部からの刺激に対して胎児が反射的な動きをする可能性があるだけだと述べている。超音波映像や胎児のモデルの大きさについてもミスリーディングであり、作中ではまるで臨月のような大きさで胎児が表現されていたが、実際には12週の胎児の身長は5センチにも満たない。同じくジョンズ・ホプキンス医科大学のジェニファー・ニービルも、胎児が痛みにたじろぎ、逃げようとしているとナサンソンが語っていた動きは「完全に反射運動」であり、ナサンソンは吸引カテーテルを登場させると同時に映画のテンポをあげ、胎児の意図的な行動であるかのように見せようとしていると指摘している。バージニア・コモンウェルス大学病院のフェイ・レッドワインは「医者であれば誰でも、中絶を受けていない胎児による同じような画像をみせることができる」と述べている。
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