可変速揚水発電
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/20 20:15 UTC 版)
可変速揚水発電(かへんそくようすいはつでん)は、ポンプ水車を可変速発電電動機で駆動し、揚水時の消費電力を可変とするものである 。 原子力発電・大規模石炭汽力発電などの割合の増加、昼間と夜間の消費電力の差の増大などで夜間の調整能力の余裕が少なくなっている。回転数・揚程(落差)・ポンプ水車の3要素で揚水に必要な電力が決まるため、回転数が一定の同期機である従来の揚水機は、起動した際の急激な系統負荷の変動が問題となってきた。また、最近では再生可能エネルギーの急速な導入に伴い春や秋など軽負荷時の日中に好天による太陽光発電の出力増が重なると電力の供給過剰が発生することがあるが、通常の揚水発電機(定速機)は太陽光発電による余剰電力は吸収できても出力変動までは吸収しきれない欠点があった。 軽負荷時の出力調整力として、可変速揚水機は、コンバインドサイクル発電などと比較して、出力変化速度が大きく・調整可能幅も大きい。火力発電の調整力供給用稼働を減らし、燃料費の低減が可能となる。また、揚水時の消費電力が随時調整可能であり変動する太陽光発電の余剰電力の吸収にも適している。 その他に可変速揚水機の利点としては、ポンプ水車の効率が最高となる回転数が発電運転時と揚水運転時で異なるので、運転時の損失を少なくすることができる。 一般的な同期機は直流励磁の回転子で固定回転数・固定周波数であるが、可変速機はインバータ/コンバータもしくはサイクロコンバータにより低い周波数の交流を得て三相巻線の回転子を励磁し、可変回転数・固定周波数を実現している。 1981年(昭和56年)に、日立製作所と関西電力が共同で開発を始め、1987年(昭和62年)に成出発電所(富山県)で実証プラントを建設(22MW)して世界で初めて実用化し、その後、大河内発電所向けに世界最大の容量(400MW)の発電機を設置している。 回転子励磁の比較方式概要半導体無効電力高電圧化部品点数発電電動機の容量インバータ/コンバータ 一旦直流に変換 自励式 消費しない 工夫を要す 多 小さくできる サイクロコンバータ 直接交流に変換 他励式 消費する 容易 少 大きくなる 従来型と可変速システムの比較システムダム容量利用地下発電所の空洞体積電機分コスト水車効率運転範囲出力変化速度発電時揚水時通常運転過渡時定速機 100% 100% 基準 50-100% 一定 0-100%/60秒 不能 可変速 より低水位で運転可能 105% 140% 最大出力時0.5%増中間負荷時2.5%増 30-100% 70-100% 0-100%/60秒 20MW/0.1秒 可変速の備考 回転子変換器 ロータ励磁装置 回転速度を変えることで高効率運転が可能 水車の特性向上 入力は速度の三乗に比例 電気的に制御 慣性エネルギーを電気エネルギーに高速変換可能
※この「可変速揚水発電」の解説は、「揚水発電」の解説の一部です。
「可変速揚水発電」を含む「揚水発電」の記事については、「揚水発電」の概要を参照ください。
- 可変速揚水発電のページへのリンク