受賞傾向と批判
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/09 23:54 UTC 版)
日本アカデミー賞は、映画業界自身が選出する映画賞としての特別の意義を持つと同時に、スタッフ部門賞を設けている映画賞としての希少性も有している。日本国内の映画賞の中では新しく立ち上げられた映画賞だが、プライムタイムにテレビ地上波で全国生中継で放送される唯一の映画賞でもあり、前年一年間に活躍した俳優や監督がドレスアップし一堂に会する式典で、授賞式の場で初めて最優秀賞を公表するイベント性を持ち、それを支える主催者の日本アカデミー賞協会の影響力もあって、近年映画業界においてその地位を向上させつつある。しかし選出する日本アカデミー賞協会は、映画監督や俳優といった人々も含むものの、約25%が日本映画製作者連盟(映連)加盟会社、すなわち松竹・東宝・東映・大映(大映の解散後は角川映画)の大手4社とその系列企業社員により構成されている。そのため優秀賞を選ぶ時点で上記4社の製作あるいは配給した作品が有利になり、他の映画会社の配給作品が選ばれるチャンスが低いとされている。立ち上げ時に創立メンバーとして呼ばれたという山本晋也は、「まず大賞を五社持ち回りでと言われガッカリした」と証言している。この件について岡田裕介会長は「フリーの会員も多い。大手が占めているのは、このうち数%。だから大手でも大きな影響力は持っていない」と述べたが、数%の発言は誤りである。 年齢層や所属先の偏った約3900人のアカデミー会員が、主要な作品の全てを公平な視点で観賞するのは困難である。それゆえ少数の選考委員による審査方式の映画賞と違い、多くのアカデミー会員を擁する日本映画製作者連盟(映連)加盟会社である大手4社が配給した映画が贔屓され、各部門の最終的な評価の対象になる可能性が高い。よって単館系公開などの小規模上映の作品や、例え口コミで公開規模が大きくなったとしても大手ではない配給会社が中心となって関わっている作品は各部門の選考において不遇を強いられることになる。加えて、過去の実績だけが大きく、認知度の高い監督やその作品、それに関わる俳優や部門スタッフらに対して権威主義的に受賞結果が偏重し、加えて社会問題を特に批評性の無いまま新しくない模範的な手法で取り扱うような、映画ファンからの支持が少ない旧弊な作風の作品が各部門賞を多数獲得する様な偏重傾向があり、弊害としてそういった賞レースの基準に作風を合わせた作品が増えることで映画業界の新しい才能や試みが評価される場を狭めているなど、映画賞としての問題点は多いとされている。 また、女優の樹木希林は日本アカデミー賞における自らの受賞スピーチの際に「日本アカデミー賞が早く本当に権威のある賞になってほしい」と暗に皮肉を込めたコメントを出している。 黒澤明監督は第4回(1981年(昭和56年))、『影武者』での受賞を「権威のない賞は認められない」として辞退し、同作品の出演俳優や部門スタッフもその意向を尊重して全員ノミネートを辞退した。 本家である米国アカデミー賞との主な違いとして、「オリジナル脚本賞」と「脚色賞(既存の原作を使った脚本)」、「長編アニメ賞」と「短編アニメ賞」のような細かい区分けがされていない。また、ドキュメンタリー映画は対象外となっている。
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