単板と合板
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 06:14 UTC 版)
ラケットは主に木材を原料としており、一枚の板からなると単板と、複数枚の板を貼り合わせて作られる合板とに区別できる。単板ラケットはおもに一枚の檜板から作られるのに対し、合板ラケットでは異なる特性の板材を組み合わせることによって作られる。 ブレードの木材については材質によって使用用途が異なるが、使用する木材や製造工程、保管方法によってもラケットの特性は左右される。使用される木材については、単板では檜や桂が主に使用される。合板では和材や洋材など多種多様であるが、中芯には桐・バルサ材・柳・シナ材・アバシ・アユース・サンバなどの比重が軽量な木材が使われ、添芯にはパイン・アネグレ・スプルース・染色材などが使われ、上板にはリンバ・コト・ウォルナット・檜・アユース・染色材が主に使用されるが、近年では黒檀・紫檀・ウエンジ材・ブラッドウッド・ホワイトアッシュなどのハードウッドが上板に用いられている。 合板の中芯に使われている桐やバルサ材は軽量材なので、セルロイドボール時代では打球が軽くなるという致命的な欠点を抱えていた。特に桐は箪笥などに使用されてきた木材なので湿気を吸ってしまうので打球感や弾性が狂いやすい特性があった。しかし、プラスチック製ボールが登場したことで状況は一変。ボールの材質が変わったことで打球感も変わったのである。桐は材質特有の球を掴む感覚と扱いやすさに加えて高い弾性を有しているため、板厚が多少厚くてもプラスチックボールでは球威が出せるため、湿気の問題点を除けば殆ど欠点が解消されており、バルサ材も球威の軽さはボールの材質でほぼ解消しており、プラスチックボール時代では回転量を残すための選択肢としての使い方がある。 単板 単板はその名の通り一枚の檜板ないし桂板から作られ、吸い付くような独特の打球感が得られる。木目を縦横に組み合わせて耐久性を上げられる合板に比べて割れやすいという欠点がある。従って、木目を縦目に配置して板厚を厚くして耐久性を上げる必要があり、ラバーを両面に貼るシェークハンドでは重くなってしまうためあまり作られない。また特性が板材の質に影響されるため、同じ種類のラケットであっても品質のばらつきが大きいが、高品質の檜を使った単板ラケットは独特の打球感に加えて反発力と剛性のバランスが良いため、特に角型ペンホルダーのドライブ主戦型選手に人気がある。そのため、高品質の檜単板を求めるプレイヤーの中には、特注単板ラケットを購入するケースも見られる。 合板 異なる特性の板材を木目を縦横に組み合わせることによって反発力と剛性のバランスをとる。これにより、単板ラケットに比べて多彩な特性のラケットが作られ、品質のばらつきも小さい。シェークハンドや中国式ペンホルダーなどに最も多く用いられ、基本的に3枚合板、5枚合板、6枚合板、7枚合板に大別される。また、特殊素材との併用が可能なのも特徴で、打球感や弾みに関しては、使用する木材や特殊素材の組み合わせにもよるため、様々なタイプの物がある。そのため、3枚合板から、多いものだと17枚合板というラケットも存在している。 合板の構成は5枚合板を例にした場合、中芯材を2枚の添材で挟み、さらに2枚の上板で挟んだ構成になっている。中芯材はラケットの大元となる木材で、ラケットに占める割合が高いため軽量材が主に使用される。使用木材や厚さなどによって弾みの度合いが異なる。一方、添材と上板は反発力と剛性のバランスをとるために用いられる。上板についてはラバー交換時に木材が割れて剥がれるのを防ぐため、柔らかすぎる木材は用いられない。3枚合板 中芯材と2枚の上板で構成されている。合板の枚数が少なく強度で劣るため、中芯材の厚さを確保したり特殊素材を入れることで高い弾みを有するラケットが登場している。しかし、合板の枚数が少ないので、ブレードの薄型化が困難でかつ中芯材の木目が横目になるため、打球感の柔らかさや中芯材が横目になるのを利用して、前陣速攻型ないしカット主戦型向けのラケットが登場している。 5枚合板 中芯材と2枚の添材、さらに2枚の上板で構成されている。中芯材の木目が縦目のため反発力と剛性のバランスがよく、ブレードの薄型化が可能である。個々の商品によって特徴が異なり、商品数も多いため、戦型を問わず初心者から上級者まで広く扱われている。また、特殊素材を入れても中芯材が縦目になるので、純木、特殊素材入りを問わず合板のブレードでは最も主流となっている。 7枚合板 中芯材と4枚の添材、さらに2枚の上板で構成されている。個々の商品によって特徴が異なるが、ブレードが厚くなりやすいので反発力と剛性が強いため球離れが速いが、中芯材の木目が横目になるため5枚合板と比べて中・後陣では弾みが上がってこないという致命的な欠点を抱えているため、専ら前陣に特化した仕様である。それ故に、従来から上級者向けないし特殊素材入りラケットが嫌という人向けのラケットとされてきたが、プラスチックボールの登場で、セルロイドボール時代の頃以上に上級者専用の傾向が強くなっている。
※この「単板と合板」の解説は、「卓球」の解説の一部です。
「単板と合板」を含む「卓球」の記事については、「卓球」の概要を参照ください。
- 単板と合板のページへのリンク