動く歩道とは? わかりやすく解説

動く歩道

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/19 00:54 UTC 版)

カナダモントリオール地下鉄ボードリー駅(en)の、斜行オートウォーク(動く歩道)
動く歩道による移動

動く歩道(うごくほどう、: moving walkwayなど)とは、踏み面が階段状にならない水平型エスカレーターの通称。オートウォークムービングウォークトラベレータームービングサイドウォーク(特に空港において)などとも呼ばれる。傾斜のあるものはオートスロープとも呼ばれている。

主として人間用の輸送機器で、水平またはスロープの形状になっている。ベルトコンベア方式のうち、スキー場の子供用ゲレンデなどで用いられるものは「マジックカーペット」と呼ばれ、ほかに「スノーエスカレーター」「ムービングベルト」「スノーウォーカー」などとも呼ばれる。

歴史

人間が立ったままで目的地にまで移動することができるという動くプラットフォームの構想は1874年アメリカニューヨークで提案されていた[1]

この動く歩道が実際に作られたのは1893年にシカゴで開かれたコロンビア博覧会(シカゴ万博)においてである[1]。この博覧会に設置された動く歩道は緩急2種類のスピードを組み合わせたもので動く歩道に乗った人がさらに速い方のプラットフォームに乗り移って移動できるように設計されていた[1]

その後、動く歩道は世界各地の空港や地下街などに導入されるようになった[2]

種類

踏み面の角度は水平になっているものと、緩やかな坂状になっているものとがあり、日本では1970年昭和45年)の日本万国博覧会(大阪万博)以降、一般的に動く歩道と呼ばれる。坂状になっているものはエスカレーターと同様、主として建物の各階や比較的大きな段差の移動に利用される。三菱電機では「トラベーター」と呼んでいる。また、傾斜しているタイプをオートスロープと呼ぶこともある。型式にも2通りがあり、エスカレーターの水平化であるパレット式ベルトコンベアゴムベルト式が存在する。

動く歩道のメーカーは以下の通り。

特徴

傾斜を持つ動く歩道

イオン東大阪店に設置してあるタイプ

踏み面が平らである事により、エスカレーターエレベーターにはない多くの利点を持っている。まず、エスカレーターと違いショッピングカートやベビーカー車椅子、大型のスーツケースなどを乗せて容易に移動できる。しかも、エレベーターのように待つ必要性がなく、より多くの利用者が同時に利用できる。踏み面に段差がないことから、乗り降りが容易でつまずく心配も少なく、高齢者や子供など、足元の不確かな利用者にとって親切である。角度が緩やかであるため恐怖感がなく、足を踏み外す危険性もない。

このように多くの利点を持つため、商業施設、空港や駅で普及しつつある。しかし、その性質上、傾斜を緩くしないと滑る恐れ[※ 1]があるために設置空間がエスカレーターやエレベーターの数倍も必要とされる欠点がある。結果的に施設の売り場面積などが犠牲になるので、導入される施設が郊外型の大型施設などに限定され、エスカレーターの代替としての導入例は少ない。

傾斜を持たない動く歩道

傾斜を持たない動く歩道

傾斜を持たない動く歩道としての導入は、大型のスーツケースなど、大きな荷物を携帯して、長距離を移動する必要のあるハブ空港空港ターミナルビル内、大規模鉄道駅JR東京駅東急渋谷駅阪急大阪梅田駅など)や大型施設や郊外型店舗などの連絡通路などでの導入例が多い。ただし設備の終点では慣性の法則により、前に投げ出されることになり、なおかつ利用者の多くは、通常の歩道のように歩いて使うので、高齢者障害者には特に注意が必要である。

1970年代から、高速を出しながら安全に移動できるよう、加減速可能な動く歩道の研究が続けられている。これは、2重のコンベアを持つ複雑な構造で、IHI等が開発している[3]

連動

エスカレーターとの連結

出町柳駅のエスカレーター
踊場のあるエスカレーター(神戸モザイク

傾斜を持たない動く歩道とエスカレーターとを連続連結し、動く歩道がそのままエスカレーターに、又はエスカレーターがそのまま動く歩道になるものもある。

設置場所の一例は以下の通り。

この他、JR東日本西川口駅仙台駅1番ホーム 金沢駅東口地下広場のエスカレーターにも数メートルであるが存在する。

動く歩道の連動

規格

規格としては、横幅は800 mm、1,200 mm、傾斜角度0〜3度のものが標準的である。エスカレーターと同様、省エネルギーに配慮して、常時稼働ではなく赤外線センサーによって人の接近を検知して、稼働するものも製造されている。

構造

  • ステップ
    • 踏み台:ステップのメインとなるところ
    • 駆動ローラ:駆動させるためのローラ
    • 駆動ユニット:動力の供給部
    • ライザ: ステップの横の部分
  • 手すり
    • 手すり駆動ローラ:手すりを駆動させるためのローラ
    • ステップリンク:ステップとの速さを合わせるためのリンク

設置例

用途・設置場所別

屋外の設置例(スペイン バスク州 ビスカヤ県 ポルトゥガレテ サンロケデポルトゥガレテ通り)

国・地域別

フランス

パリ、モンパルナス=ビヤンヴニュ駅にある世界最速の動く歩道

2002年7月1日[6]パリにあるモンパルナス=ビヤンヴニュ駅に通常(約0.8 m/s)の3倍の速さ(約2.5 m/s)で動く歩道が設置され、世界的な話題となったが、あまりにも速いために乗降時に転倒する人が続出し、4日後の7月5日には一時使用停止に追い込まれた。これは先端および終端付近に独立して動くローラーがあり、先端ではだんだん速くなって高速コンベア部に接続し、終端ではだんだん遅くなって出口にたどり着くという構造である。

日本

日本では、1967年大阪市阪急梅田駅に最初に設置され[7]阪急電鉄はこの動く歩道を「ムービングウォーク」と呼んだ[8]。駅設備移転に伴う他鉄道との乗換不便解消のためのもので、横一列に幾本もの動く歩道が並び、現在[いつ?]でも日本最大規模である[※ 2]。当初はスウェーデンの特殊鋼メーカーSANDVIKの「サンドビック・ムーベーター」が使用されていた[9][10]

3年後の1970年大阪万博で日本において広く知られるようになったが、同年3月26日に緊急停止により利用者が将棋倒しになって42人が負傷する事故が発生。しばらくの間マイナスイメージがつきまとうこととなった[11]1975年新下関駅山口県下関市)上り乗降場下の連絡通路に日本国有鉄道で初の動く歩道(ウォーキングベルト)を設置[12]関東地方では東京駅[※ 3]新宿駅の西口から新都心方面への遊歩道、桜木町駅から横浜博覧会の桜木町ゲートへの連絡橋(現在は横浜ランドマークタワー用に転用)など複数の設置例がある。東海地方では名古屋市1989年に開催された世界デザイン博覧会に合わせて3会場のうちの白鳥会場に近い名古屋市営地下鉄名港線(当時は名城線)日比野駅に設置された(但し、現存せず)。浜松市のJR浜松駅東口とアクトシティ浜松とを結ぶ連絡デッキにも設置されている。

中国

脚注

注釈

  1. ^ 用意されている専用カートは逸走事故防止のため、車輪とステップの溝の幅を合わせて走行ロックが掛かる配慮がなされている場合が多いが、ロック機構の無いキャスター付スーツケースの場合は階下まで滑り落ちていく可能性がある。
  2. ^ 同駅は隣接する阪急百貨店うめだ本店の建て替えにより動く歩道はリニューアル工事を施工した。
  3. ^ 京葉線ホームへの連絡通路。

出典

  1. ^ a b c 安藤建設『100年101歩』東洋経済新報社、1972年、127頁
  2. ^ 安藤建設『100年101歩』東洋経済新報社、1972年、128頁
  3. ^ “Linear motors speed moving pavements”. ニュー・サイエンティスト (Reed Business Information) 53 (787): 601. (1972年3月). ISSN 0262-4079. 
  4. ^ a b ちゅうもく!おもしろいエレベーターやエスカレーター - 一般社団法人日本エレベーター協会ホームページ
  5. ^ 博多駅 筑紫口新設エスカレーターの供用開始について” (PDF). 福岡市交通局 (2021年9月24日). 2021年9月28日閲覧。
  6. ^ http://www.asahi.com/international/update/0709/007.html 及び http://www.kanda-family.net/diary/bn2002.htm
  7. ^ 『意外な大阪の「駅」のナゾ』天夢人、2023年、144頁。 
  8. ^ プロジェクト|阪急電鉄株式会社 | 採用情報2016
  9. ^ SANDVIK (1968). “世界の主要都市にますますふえる<動く歩道>サンドビック・ムーベーター”. 建築と社会 = Architecture and society 49(7): 29. 
  10. ^ 並木登喜男 (1968). “都市交通施設特集 「2」各論(計画と実例) 阪急梅田駅拡張計画”. 建築と社会 = Architecture and society 49(7): 77-79. 
  11. ^ 「業務上過失傷害で捜査 動く歩道事故」『朝日新聞』昭和45年(1970年)3月27日朝刊、12版、15面
  12. ^ 『新幹線50年史』財団法人交通協力会、2015年、260頁。 ISBN 978-4-330-56715-0 

関連項目


動く歩道

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/03/25 07:13 UTC 版)

松江フォーゲルパーク」の記事における「動く歩道」の解説

動く歩道 くにびき展望台」からの景色 センターハウスからくにびき展望台までを結ぶ140メートルの動く歩道。この両脇にもホオジロカンムリヅルなどの鳥類飼育されている。この施設のみ車椅子利用不可能で、車椅子利用者は送迎車両を利用できる

※この「動く歩道」の解説は、「松江フォーゲルパーク」の解説の一部です。
「動く歩道」を含む「松江フォーゲルパーク」の記事については、「松江フォーゲルパーク」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「動く歩道」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

「動く歩道」の例文・使い方・用例・文例

  • 動く歩道
Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「動く歩道」の関連用語

動く歩道のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



動く歩道のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの動く歩道 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの松江フォーゲルパーク (改訂履歴)、大阪万博の交通 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS