加齢による卵子老化と保険適応年齢
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 01:40 UTC 版)
「不妊」の記事における「加齢による卵子老化と保険適応年齢」の解説
卵子のもととなる細胞(原始卵胞)は、女性が生まれたときに既に体の中にあり、年齢と同じだけ年を重ねるために、女性が老化すると不具合が出る。不妊治療を受けても、加齢と共に子どもを授かる可能性は低くなる。日本産科婦人科学会によると、体外受精を行っても1回の治療で出産した割合は、30歳代半ばまでで約20%で、40歳では約10%にまで下がる。43歳の女性が体外受精しても出産に至る確率は4%まで下がり、流産率は48%に跳ね上がる。加齢と妊娠の関係について、産婦人科医の石原理埼玉医科大教授は「加齢により卵子の染色体異常の割合が高まります。妊娠率は低下し、流産率は上昇。子宮筋腫などの合併症や、妊娠中の高血圧や糖尿病も増えます。若いほうが低リスクで出産できるのは間違いありません」と述べている。子ども好きであったため、「いつかは子どものいる家庭を」と思いながら、「まずは仕事を一生懸命やって、妊娠、出産はその後に」と考えていたが国内外で転勤を重ねるうちに40代に突入した遠藤富美子読売新聞東京本社英字新聞部記者は、41歳で同い年と結婚・43歳で不妊治療開始し、5年による多額を費やした不妊治療で48歳で出産した。遠藤記者によると娘の妊娠直前は「この先、夫と2人でどう生きようか」「もう妊娠は無理だろう」と考えることが増え、採卵方法中止して以前凍結した胚の移植しようとしていたところであり、47歳での通算10回目の移植で妊娠判定が医師から出た。2019年春に、帝王切開で3000グラム台の健康な女の子を出産成功した。採卵や移植を受けるごとに十数万から二十数万単位が掛かっていた遠藤記者は40代の有名人による出産ニュースもよく目にしたため、「40代で産んでいる人も結構いそうだし、まだ時間あるよね」と、「まだ時間あるよね」という楽観主義で妊娠適齢期の20代・30代を過ごしてしまったとし、出産後の51歳である2022年2月には「女性は年を重ねると卵子の老化問題にぶつかるため、子どもを望むのなら妊娠しやすい年齢を意識してライフプランを考えたほうがよさそうです。」と述べている。 このように、いくつになっても子供は産めると誤解している女性も珍しくないが、妊娠には適齢期があり、女性の年齢が高くなれば妊娠は難しくなる。そのため、ドイツでは40歳までは不妊検査や不妊治療が公的健康保険適用範囲内となっており、不妊検査は無料、人工授精など次のステップは半額自己負担となっていて、年齢制限が存在する。日本でもタブーとされてきた、加齢による「卵子の老化」が26歳以降の妊娠を難しくする主な原因として指摘されている。女性と男性のどちらにも疾患がない健康な男女のカップルでも、卵子の老化により妊娠の可能性は低くなる。 健康な男性の場合、生殖細胞(精子)を毎回新たに作るが、健康な女性でも生殖細胞(卵子)は発生時より分化形成され、そのあと新たに作られることはない。この違いの結果、精子の年齢は受精時には長くても生後数日であるのに対し、卵子の歳は排卵時の女性の年齢+1となる。どれほど女性の肉体(体細胞)が若々しく見えても、卵子(生殖細胞)の受けたダメージをはかり知ることはできない。ここでいう「卵子の老化」とは、平均約26歳で大きく下落、33歳から急激に悪化の一途を辿り、40歳にほぼ生殖能力なくなり、50歳前後に迎える閉経時に生殖能力が0になる。「卵子の老化」は卵子の機能の低下の総称である加齢に伴う卵巣内の卵胞数の減少や、卵子の顆粒膜細胞の数の減少、核の染色体の不正確な分離、ミトコンドリアのDNAの減少、小胞体のカルシウム取り込みの能力の低下、などと考えられている。
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