前十字靭帯損傷とは? わかりやすく解説

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前十字靭帯損傷

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/10/22 02:28 UTC 版)

前十字靭帯損傷
右膝の図
概要
診療科 整形外科
症状 痛み、膝の不安定感、関節の腫れ
原因 急激な方向転換、突然の停止、ジャンプ後の着地、接触
危険因子 スポーツ選手、女性
診断法 身体所見、MRI
予防 神経筋トレーニング、体幹強化
治療 装具、理学療法、手術
頻度 1年間に200,000件 (アメリカ)
分類および外部参照情報

前十字靭帯損傷(ぜんじゅうじじんたいそんしょう)は、前十字靭帯(ACL)が伸びている、部分的に裂けている、または完全に裂けている状態のことである[1]。最も一般的に診られる損傷は完全に裂けている状態である[1]。症状には、痛み、損傷の際に靭帯が裂ける音、膝の不安定感、関節の腫れなどがあげられる[1]。腫れは通常、損傷してから数時間以内に現れる[2]。症例の約50%には、周囲の靭帯軟骨半月板などのの構造の損傷が伴う[1]

根本的な起因には、多くの場合、急激な方向転換、突然の停止、ジャンプ後の着地、または膝への直接の接触などがあげられる[1]。一般的にスポーツ選手によく診られ、特にアルペンスキーサッカーアメリカンフットボールバスケットボール選手に多い[1][3]。診断は通常、身体所見によって行われ、場合によっては磁気共鳴画像法(MRI)が用いられることもある[1]。身体所見では、膝関節周辺の圧痛、膝の可動域の減少、過度の関節の緩みが多く診られる[4]

予防は、神経筋トレーニングと体幹強化をすることである[5][6]。推奨される治療は、希望する運動水準によって異なる[1]。将来の運動水準が低い人には、装具(ブレース)や理学療法などの非外科的治療で十分な場合がある[1]。運動水準が高い人には、関節鏡による前十字靭帯再建である外科的治療が推奨される場合がほとんどである[1]。再建手術は、体の別の部分または死体から採取された腱との置換が施される[4]。手術後のリハビリには、関節の可動域をゆっくりと広げ、膝の周りの筋肉を強化するトレーニングが行われる[1]。手術が推奨される場合は、通常、損傷による最初の炎症が解消されるまで手術は実施されない[1]

米国では年間約200,000人が罹患している[2]。一部のスポーツでは、女性の方がACL損傷のリスクが高いが、その他のスポーツでは、男女両方に等しくリスクがある[3][7]。成人患者のACLが完全に裂けた状態である方が変形性膝関節症の発症率が高くなるが、治療法によってこのリスクが変わることはない[8]

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l Anterior Cruciate Ligament (ACL) Injuries-OrthoInfo - AAOS”. orthoinfo.aaos.org (March 2014). 5 July 2017時点のオリジナルよりアーカイブ30 June 2017閲覧。
  2. ^ a b ACL Injury: Does It Require Surgery?-OrthoInfo - AAOS”. orthoinfo.aaos.org (September 2009). 22 June 2017時点のオリジナルよりアーカイブ30 June 2017閲覧。
  3. ^ a b “A meta-analysis of the incidence of anterior cruciate ligament tears as a function of gender, sport, and a knee injury-reduction regimen”. Arthroscopy 23 (12): 1320–25. (December 2007). doi:10.1016/j.arthro.2007.07.003. PMID 18063176. 
  4. ^ a b “ACL Injury: Does It Require Surgery? - OrthoInfo - AAOS”. https://orthoinfo.aaos.org/en/treatment/acl-injury-does-it-require-surgery/ 2018年3月22日閲覧。 
  5. ^ “Anterior cruciate ligament injuries in female athletes: Part 2, a meta-analysis of neuromuscular interventions aimed at injury prevention”. The American Journal of Sports Medicine 34 (3): 490–8. (March 2006). doi:10.1177/0363546505282619. PMID 16382007. 
  6. ^ “Specific exercise effects of preventive neuromuscular training intervention on anterior cruciate ligament injury risk reduction in young females: meta-analysis and subgroup analysis”. British Journal of Sports Medicine 49 (5): 282–9. (March 2015). doi:10.1136/bjsports-2014-093461. PMID 25452612. 
  7. ^ Montalvo, Alicia M; Schneider, Daniel K; Yut, Laura; Webster, Kate E; Beynnon, Bruce; Kocher, Mininder S; Myer, Gregory D (August 2019). “'What's my risk of sustaining an ACL injury while playing sports?' A systematic review with meta-analysis”. British Journal of Sports Medicine 53 (16): 1003–1012. doi:10.1136/bjsports-2016-096274. PMC 6561829. PMID 29514822. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6561829/. 
  8. ^ Monk, A Paul; Davies, Loretta J; Hopewell, Sally; Harris, Kristina; Beard, David J; Price, Andrew J (3 April 2016). “Surgical versus conservative interventions for treating anterior cruciate ligament injuries”. Cochrane Database of Systematic Reviews 4: CD011166. doi:10.1002/14651858.CD011166.pub2. PMC 6464826. PMID 27039329. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6464826/. 

外部リンク


前十字靭帯損傷

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/10/31 04:29 UTC 版)

前十字靭帯」の記事における「前十字靭帯損傷」の解説

主にスポーツをしている人にこの損傷はよく起こる。特にサッカーバスケットボールスキー等の急激な方向転換を伴うスポーツや、ラグビーアメリカンフットボール格闘技など、コンタクトの多いスポーツにおいて自分意思とは違った方向関節強制的に持っていかれたり、地面着地した際に、体重大きく曲がってしまったときに起こる。受傷時にはたいてい、体内で「ブチッ」と音がし、そのときには多少困難さ有るが、歩行可能なことが多い。受傷後の翌日には、膝に多く血液溜まっていることが多く、こうなると歩行は困難となる。 また、膝部位にある前十字靭帯単独での損傷少なく、たいていは他の器官半月板内側側副靭帯など)の損傷を伴うことが多い。 男性よりも女性好発することが報告されているが,その頻度は2倍〜8倍と報告によってまちまちである。また、女性好発する要因はっきりしていない。 前十字靭帯血液流れが非常に悪い部分なので自然治癒することはほとんどないが、損傷断裂した場合でも、周り筋肉鍛えることで日常生活レクリエーション程度スポーツであれば問題なくこなすことができる場合もある(保存療法)。しかし、換言すると、保存療法によって競技レベルでのスポーツ復帰することは難しいことが示唆されており、一般的には手術によって再建するしか治す方法はない。 また、前十字靭帯断裂は、将来的変形性膝関節症発症リスク高めることが知られている。前十字靭帯断裂経験がある人は、そうでない人の3.62倍、保存的療法行なったケースでは、再建した人の4.98倍にまでリスクが高まるという報告存在する

※この「前十字靭帯損傷」の解説は、「前十字靭帯」の解説の一部です。
「前十字靭帯損傷」を含む「前十字靭帯」の記事については、「前十字靭帯」の概要を参照ください。

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