分布拡大による問題点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/28 02:40 UTC 版)
カワウは営巣時、生木の枝を折り取るため、コロニーでは樹木の枯死が広範囲にわたって起こることが多い。また、多量の真っ白な糞によりコロニーや採餌場所では水質・土壌汚染、悪臭、景観の悪化など招く他、糞が植物の葉を覆って光合成を阻害し植物を枯らす。日本の大コロニーとしては、不忍池や琵琶湖の竹生島が知られているが、後者は1983年(昭和58年)の生息確認から、わずか10年近くで3万羽を数えるまでに拡大したことで注目を集めている。竹生島のコロニーからは、若い個体が日本各地へ巣立ちをしており、中には九州にまで到達した個体も確認されている。こうした生息域の広がりは、地域固有の環境を破壊したり、漁協などによって人為的に放流されたアユやアマゴなどの漁業被害を与えるなど深刻な状況となっている。 江戸時代にもカワウの糞による樹木の枯死が嫌悪されていたとされるものの、生息数そのものは現在の「増加した状態」と変わらなかったものとされ、現在殊更に問題視されるようになったのは、当時は森林が広大で、営巣地が枯死した後に他の場所へ移動して、その間に樹木が回復するサイクルが出来ていたのであろうとされる。また後述されるように糞が肥料として好まれた点もある。 2007年(平成19年)3月、環境省は鳥獣保護法に基づく狩猟対象にする方針を決め、2007年6月1日以降には狩猟鳥となり、狩猟可能な期間と地域であれば特別な許可なく捕獲できるようになった。新たに狩猟鳥に加えられたのには、全国で70億円を超すとされる本種による農林水産業被害に拠るところが大きいが、本種の形成するコロニーにより、その周囲の生態系がかく乱されるのを防止することも重視されたようである。 しかし江戸時代以前から本種はその肉にも羽毛にもたいした利用価値はなく、現在もその状況は変わらないので、狩猟鳥になったといってもハンターが積極的に本種を狩猟するかどうかには疑わしいものがあり、ゆえに狩猟による個体数の減少を期待するのは見当違いである、といった意見もある。ただし、狩猟鳥となったことで被害を理由とした駆除の許可を得やすくなったことは確かである。 一方、愛知県知多郡では古くに糞が農業肥料用に重用され、町の財源を潤した。その代価で小学校が建設されたこともあり、現在でもカワウは町のシンボルである。美浜町の繁殖地「鵜の山」は国の天然記念物として1934年(昭和9年)1月22日に指定された。 日本国外でもカワウの急増による被害は起きており、アメリカのコロンビア川では現地で絶滅が危惧されている鮭がカワウの被害を受け、鮭を守る為に陸軍がカワウの駆除を行っている。
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