出力の安定性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/04 01:41 UTC 版)
再生可能エネルギーの中でも風力発電や太陽光発電は出力が不随意に変動するため、大規模な電力需要を賄うためには変動を抑制するための平準化手段が必要とされる。発電設備側の調整が不十分な場合に限られるが仮に系統側が変動を吸収しきれなければ、電圧や周波数の規定外の乱れや、最悪の場合は停電に繋がる場合が想定される。その一方、電力系統に接続できる限界容量の予測には不正確な見積もりや非現実的な想定が意図的に為されている場合が広く見られる(起きないとするものから数%と見積もっているものなどがある)(P.254、P.261など)。適切な対応を取れば、需要の数割程度の電力を問題なく供給可能とされる。例えばデンマークでは2006年時点で国の電力の20%を風力発電で賄っており、さらに増やす予定である。またスペインで風力発電による供給割合が瞬間的な需要の4割、数日間の平均でも約28%に達した例など、既に多くの報告がある。 不随意に変動する電源を効率的に利用するために、下記のような制度的・技術的な工夫が実用、または開発されている。 他の発電方法の小規模発電設備と連系するマイクログリッド等 制度的に発電量の1割程度までの天然ガス火力発電等の組み合わせを認め、供給の安定度に応じて電力の買い取り価格を優遇する(P.51-52) 系統設備を強化する逆潮流への対応等 設備側である程度の蓄積・蓄電をする(揚水・蓄熱・加圧等による蓄積、バッテリー・フライホイール等による蓄電等) 需要側で需給バランスの平準化を図る電力単価の時間別調整 ピークシェービング(ピークカット)、夜間電力の活用など 電力供給に占める火力発電の割合の減少、太陽光発電や風力発電などの変動する電源やマイクロ水力などの分散型電源の割合の増加、電気自動車などによる需要の変化に合わせて、電力系統の情報化や送電網の強化、蓄電池の追加などの系統側での対策を用いることが検討されている[要出典]。こうした対策には相応のコストがかかる。風力発電の出力変動発電量の10%程度までは問題にならないが、20%を超えるとコストが顕著に増えてくるとされる。どの技術をどう用い、どれだけの不随意電源を導入するのが適切なのか、各国で検討が進められている。ドイツの金属産業連盟とベルリン工科大学による試算の場合、再生可能エネルギー導入に伴う間接経費は2020年で1kWhあたり0.6 - 0.7ユーロセントになると予想している。 日本でも導入に伴う影響や費用負担の検討が始まっている。系統安定化の費用は日本全体で2030年までの合計で数兆円の単位になるとみられ、蓄電池や配電対策を含めた様々な形態が検討されている。たとえば資源エネルギー庁は電事連の試算の1.2 - 1.5倍の容量の蓄電池を導入を仮定し、この場合の費用を5兆円前後と試算している。 貯水式の水力、バイオマスなど再生可能な燃料を用いた火力発電、地熱発電などでは任意に出力を制御できる。また、太陽熱利用(太陽熱温水器など)や太陽熱発電の場合、蓄熱によって出力をより柔軟に制御可能である。
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