保護される権利者
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/10 07:42 UTC 版)
「著作権法 (フランス)」の記事における「保護される権利者」の解説
フランスの著作権法では「精神の著作物の著作者」と謳われていることから(L111条-1)、原則は個人(自然人)のみ著作者として認められる(L113条-1)。しかし、1993年の判例でこの原則が覆され、法人も著作者として認める判決が出ている。著作者は以下に分類される。 原始的帰属(原則ルール)-- 著作物を創作した個人が著作権を有する(L113条-1) 職務著作 -- 著作物の創作を指示した雇用主あるいは発注主が著作権を有するには、個別の譲渡契約が必要となる(L111条-3、L131条-3) 共同著作物 -- 複数の著作者によって創作された場合、共同著作者が権利を共有する(L113条-2、L113条-3) 集合著作物 -- 複数の著作者によって創作された個々の著作物をまとめ直した場合、集合著作物の創作を発意した者が著作権を有する(L113条-2、L113条-3) 二次的著作物 -- 原著作物を活用して、翻訳・編曲などの手段で新たな著作物が創作された場合、原著作物と二次的著作物は別々の著作権が発生する(L113条-2、L113条-3) 職務著作をどのような条件下で認めるか、各国の著作権法で異なっており、フランスの場合は雇用契約に基づいて著作物を創作しただけでは、その著作権は雇用主が有することはできない。したがって、雇用契約とは別に、従業員から雇用主に著作財産権を譲渡する契約を締結しなければならない。職務著作をめぐっては、医療現場で用いられる頭蓋計測分析(英語版)のソフトウェア裁判などがある。このソフトウェア企業はコンピュータ・エンジニアと医学者の2名で設立されたが、のちに医学者がこの会社の支配権を増したことから、開発されたソフトウェアの著作権が個人ではなく、会社に帰属するとして提訴した裁判である。2015年1月、破毀院は原告である医学者の主張を棄却して、ソフトウェアの職務著作を認めなかった。 各国の違いについては「職務著作#職務著作の条件と対象」を参照 共同著作物については、特に映画などの視聴覚著作物に関し、個別規定が存在する(L113条-7)。多くの関係者が映画製作に携わるのが一般的であることから、誰を共同著作者として認め、著作権を与えるかの線引きが必要になる。条文上では、シナリオの著作者(たとえば映画化の原作小説を執筆した小説家)、翻案および台詞の著作者(原作を元にした脚本の執筆者など)、楽曲の作詞・作曲家(その映画用に創作された楽曲に限る)、監督・ディレクターが具体的に例示されている。ただし、これら以外でも共同参画を立証できれば、共同著作者として法的に認められる場合がある。映画の場合、著作財産権だけでなく、著作者人格権も重要な要素となる。先述のとおり、映画の共同著作者以外の者が、完成版を無断で改変したり、また途中で製作を離脱した者が、自分の寄与分を除去するよう求めることができない(L121条-5、L121条-6)。 集合著作物も共同著作物と同様、複数名によって創作されるが、その定義は曖昧である。集合著作物と、その素材となる各著作物との間に上下関係があり、集合著作物の創作をある特定の者が指示した場合には、共同著作物ではなく集合著作物だとされる。この指示者には法人も含まれることから、集合著作物の場合は原則として職務著作が認められていると考えられる。 「en: Collective work (France)」も参照 権利の所在が不明な著作物(いわゆる孤児著作物)が公表される際には、DR(フランス語版)(フランス語: droits réservés、権利留保の意)の文字が表記される。孤児著作物とは、著作権者が誰なのか不明なだけであり、著作権を放棄したわけではない。しかし、2012年10月に孤児著作物に関するEU指令(英語版)が成立し、一定条件を満たせば孤児著作物の著作者から許諾を得ずとも、第三者が著作物を利用できるようになった。欧州連合知的財産庁(EUIPO)が孤児著作物の検索データベースを一般公開している。
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