価格と需給バランス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/28 13:56 UTC 版)
多くのベースメタルや貴金属は、世界の主要な商品取引所、たとえばロンドン金属取引所 (LME) やシカゴ・マーカンタイル取引所 (CME)、ニューヨーク商品取引所 (COMEX) などで日々売買され市場価格の透明性が確保されている。一方、ほとんどのレアメタルは実需流通規模が小さく公正な市場価格の形成維持が困難なため、商品取引所に上場していない。代わりに、経済紙や金属専門雑誌、ウェブニュースでの流通価格情報が取引の指標として用いられており、取引の透明性や即時性、流動性に乏しい。 一般にレアメタルが希少な理由は、 地殻中の存在量が比較的少なく、採掘と精錬のコストが高い 単体として取り出すことが技術的に困難 金属の特性から製錬のコストが高い といった点があげられているが、今後はこうした資源量の少なさなどよりも、採掘時やリサイクルの際に大量のエネルギー消費や有害な廃棄物を生じるために「地球温暖化防止」などの観点から取り扱いが制限される可能性が指摘されている。 この他の理由として、過去の長期にわたって金属の取引価格が低く抑制されてきたことが挙げられる。仮にレアメタルが金やプラチナ並みに高騰を続けた場合、様々な鉱石に僅かに含まれるレアメタルを抽出、製錬することで採算が取れるため採掘量は拡大していたと思われる。また、製錬の技術開発に多額の投資がなされていれば、より多くの量が抽出できている可能性がある。 実はレアメタルは、レアアースを除けば地殻中の存在量は、鉄や銅の例外を除くベースメタル(コモンメタル)の存在量よりむしろ多い。レアアースが希少であるのは、採鉱される鉱石に含まれる割合が非常に少ないために、精錬による濃縮に大きな手間がかかるためである。金、銀、鉛、錫のようなベースメタル(コモンメタル)では特定の鉱石中に高い割合で目的の金属元素が含まれているので、昔から簡単な精錬方法で利用されてきたが、レアメタルはクロム、マンガン、ニッケルのように鉱石として採掘されるものは少数派で、ほとんどは他の金属鉱石中に微量が、構成金属を置換して存在している。 レアメタルは1.から3.までの理由のほか、用途が限られているため特定の産業でしか用いられなかったり、他の金属に代替できたり、価格高騰時には国家レベルで抑制策が打たれたりといった様々な制約から価格の高騰が抑制され、取引量が拡大しない点で希少性を保ってきた。こうした状況の中で、レアメタルと呼ばれる各種元素で絶対的な枯渇が起きるという情報はないが、BRICsの経済発展と特殊な電子機器の部品開発に伴う急激な需要の増加に対して供給量が少ないために急激な価格の高騰が起こっており、2002年から2007年の5年間でニッケルの価格が8倍になったほか、モリブデンやレアアースなど多くの物質で価格が数倍に上がっている。 一方でレアメタルは用途が狭いために、代替技術が開発されると需要が急減するため市場価格が不安定である特性を持つことが、こういった特殊な地下資源産業への投資行動を躊躇させている。1979年の「ミネラル・ショック」時には、日本でもコバルトやモリブデンを触媒として消費していたメーカーは直ちにリサイクル技術を確立することで消費量を削減した。 レアメタルはほとんどの製造業で不可欠な素材である。半導体産業ではタングステンやモリブデン、ニッケルなどが必須の素材であるし、自動車産業では白金やパラジウムなどがなければ排ガス規制をクリアできる自動車を製造できないといわれている。ただし白金を使用しない燃料電池が開発されたことから、今後白金の需要は減退するという見方もある。捨てられた携帯電話や家電製品など廃棄物からの抽出によるリサイクルも行われており、新たな資源供給源として「都市鉱山」と呼ばれている。
※この「価格と需給バランス」の解説は、「レアメタル」の解説の一部です。
「価格と需給バランス」を含む「レアメタル」の記事については、「レアメタル」の概要を参照ください。
- 価格と需給バランスのページへのリンク