作品制作上の影響
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/17 06:51 UTC 版)
詳細は「セル画」を参照 デジタル制作、3DCG活用の流れの発端となったのは、2000年に公開されたProduction I.Gの作品『BLOOD THE LAST VAMPIRE』である。従来の2Dセルアニメとは異質なものに仕上がっており、クエンティン・タランティーノが大いに気に入り、『キル・ビル』のアニメパートをProduction I.Gに依頼したという話も有名。日本のアニメーションを独特のものにしている重要なファクターとして、光や水、爆発による炎や煙などのキャラクター以外の「エフェクトアニメーション」が挙げられるが、エフェクトで描かれるものは不定形であり、本来セル表現には不向きであった。しかし、セル画時代には平板なペイントに特殊効果と透過光で味付けする程度で制限を受けていたエフェクト表現は、デジタル時代に入ると飛躍的にパワーアップした。特に光は、それそのものがデジタル撮影でコントロールできるようになった結果、エフェクトに熟練したアニメーターが2D処理のCGツールを使いこなすことで、驚くべき効果が上がるようになった。 撮影や特殊効果の分野は、セルを何枚も重ねることによる明るさの減少がないこと、より自由になったカメラワーク、コンピュータによるデジタル画像処理で特殊効果を簡単にかけられるという利点がある。エアブラシや透過光など従来技術から移行したため、アニメ業界ではデジタル技術の習得が必須となった。 アナログ時代にはフィルム撮影されていたが、デジタルアニメではコンピュータから直接ビデオへ出力するため、フィルム撮影が不要となりコストダウンがされている。フィルムとビデオでは映像の質感が異なり、アナログのフィルムは柔らかい質感、ビデオはクリアな映像が特徴である。そのため、今よりもビデオ映像のデジタルアニメは初期において、従来のフィルムアニメより、クリアで明るすぎる発色に違和感があったりするといわれていたが、2007年以降はデジタルテレビの普及により色の明るさが見直され、セルアニメを凌ぐ美しさを持つ作品もみられる。 仕上げの分野では、ワンクリックのデジタルペイントは、塗料の乾燥までの時間が節約でき、訂正も容易である。傷やホコリといったセル画の管理の手間も省けるなど、省力化で大量生産が可能になった。 塗料による制約された色数は、ほぼ無限のバリエーションが使えるようになり、グラデーションなどが、これまで以上の表現が可能になった。 物流面では、デジタル化によりネットワークにアニメ素材をデータとして載せることができ、地方へのスタジオ設置や国外とのやりとりで時間やコストが節約できるようになった。 一方で、デジタル化による新たな問題、レンダリングの時間コストの増大化が発生している。アニメプロデューサーの上田耕行によると、今のテレビのクオリティを維持するのは大変だという。ヤマサキオサムは、デジタル化により作業の難易度が上がっていると述べている。 CGアニメ制作では老舗的存在で知られるポリゴン・ピクチュアズは徹底した工程管理を行ない、品質や納期の両立、社員の過重労働防止などに力を入れている。
※この「作品制作上の影響」の解説は、「デジタルアニメ」の解説の一部です。
「作品制作上の影響」を含む「デジタルアニメ」の記事については、「デジタルアニメ」の概要を参照ください。
- 作品制作上の影響のページへのリンク