今日の軽戦車
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/10 09:57 UTC 版)
戦後に開発配備された軽戦車は陳腐化と共に後継車が開発されることなく、歩兵戦闘車などの装甲車に代替された。ただし現在でも一部の国では、主力戦車より取得コストが低い、装輪装甲車より悪路での運用性が良いなどの理由により運用が続いている。冷戦末期頃から戦闘車両のファミリー化が広まったことを受けて、新規開発よりも装軌装甲車の派生型として砲塔を換装したものが多く、同様に砲塔を換装した装輪装甲車もあり、こちらは装輪戦闘車、装輪戦車ともよばれる。 また、水陸両用戦車も一種の軽戦車であり、水陸両用戦車から発展した軽戦車も多い。ただ、やはり能力不足と戦車揚陸艦の発展により、先進国の軍には配備されなくなってきている。 空挺戦車も同様に廃れているが、PKOなど海外派遣任務を重視するドイツが、豆戦車的なヴィーゼルを開発した。空挺戦車でもここまで小型のものは中型または大型ヘリコプターでの空輸が可能で、装甲偵察車としてイギリスのスコーピオンやフランスのAML装甲車、ERC 90装甲車などがある。 アメリカはM551シェリダンの後継としてM8 AGSを試作したものの開発中止に終わり、さらにフューチャー・コンバット・システムの一環としてM1エイブラムスの後継としてMCSを開発するもこれも計画中止に終わり、代替としてストライカー装甲車の派生型としてM1128 ストライカーMGSが造られた(これは開発中止されたLOSAT対戦車ミサイルの代替でもある。M1エイブラムスは後継開発を止めて引き続き発展型を計画することになった)。 一方中国では2011年に退役した62式軽戦車の後継として、新たに15式軽戦車を開発しこれを制式採用した。本車両は山岳地帯や田園地帯と言った主力戦車が運用しにくい地形で運用され、歩兵部隊への火力支援に用いることを想定している。 また中国の後を追う形で、上記の装輪戦車ないしは、歩兵戦闘車などの車台を用いた装軌軽戦車も、アメリカがMPF計画(英語版)において再び2022年にグリフィンⅡを採用、500両規模の調達を予定している等、復権の兆しが現れている。背景には、21世紀現在の非対称戦環境下においては、途上国でも普通になった鉄筋コンクリート建物を即興のトーチカにしてくる武装勢力に対し、空爆や長距離重砲は都市への破壊規模が大きすぎ、歩兵戦闘車以下の機関砲や対戦車ミサイルではいまひとつ有効に対処できず、精密・即効的で必要十分な破壊力、コストパフォーマンスに優れた戦車砲の戦術上の要求は増大している。ところが、特に旧西側代表のM1エイブラムスやレオパルド2の後継MBT開発が予算的事情から停滞し、逐次近代化改修によって補ってきたものの60~70トン級にまで「重戦車化」したことで輸送や交通インフラに制約され進出がままならないという需給のギャップが生じており、MBTよりも軽量・低コストで戦車砲を備えた車両が望まれていることがある。 特に、近年軍需の伸びが大きい一方、道路等の輸送インフラ整備がまだ不十分で地勢的にも重車両の踏破困難箇所が多い東南アジア地域では軽戦車の需要が大きいと見込まれ、インドネシア・トルコ共同開発のMMWTや、フィリピンでも60年ぶりに戦車隊を復活させサブラ軽戦車(英語版)の採用を決定し、インドも15式軽戦車への対抗を念頭に350両の調達を計画している。
※この「今日の軽戦車」の解説は、「軽戦車」の解説の一部です。
「今日の軽戦車」を含む「軽戦車」の記事については、「軽戦車」の概要を参照ください。
- 今日の軽戦車のページへのリンク