62式軽戦車とは? わかりやすく解説

62式軽戦車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/25 15:03 UTC 版)

62式軽戦車
62式軽戦車(初期型)
広東省中山市の中山艦博物館(中山舰博物馆)の展示品
性能諸元
全長 7.9 m
車体長 5.6 m
全幅 2.9 m
全高 2.3 m
重量 21.0 t
懸架方式 トーションバー方式
前進3速/後進1速 後輪駆動
速度 60 km/h
行動距離 450 km
主砲 62式54口径85mmライフル砲
105mm低反動砲(M型) ×1
副武装 54式12.7mm機関銃 ×1
59式7.62 mm機関銃 ×1
装甲
砲塔
  • 前面40-50 mm
  • 後面32-38 mm
  • 上面20 mm
車体
  • 前面上・下部各25 mm
  • 側面25 mm
  • 後面16 mm
  • 上面16 mm
  • 底面12.6mm
エンジン 12150L-3
水冷V型12気筒ディーゼル
430 hp
乗員 4名
テンプレートを表示

62式軽戦車(62しきけいせんしゃ 62式轻型坦克・WZ-131)は、ソビエト連邦からの技術供与の下で開発に成功した59式戦車を踏まえて、59式をスケールダウンさせた中国初の国産戦車である。

山岳、水田、河川の多い地域での運用を目的に開発され、1989年までに1,500輌以上が生産され国内だけでなく海外にも数多く輸出された。

開発

1950年代、中国は59式戦車での戦車生産を元に、本格的に自国での戦車開発をスタートさせた。技術的限界から59式戦車をベースにした軽戦車の開発が企画され、1958年から設計が始まり、1963年から674工場にて生産が始まった。

設計

上面からみた62式軽戦車

車体の基本設計は、59式戦車を一回り小型化したものである。重量は15t軽量化されており、装甲の厚さはベースとなった59式戦車より遥かに薄くなっているが、エンジンには59式戦車の低馬力仕様の12150L-3型12気筒水冷エンジン(430馬力)を搭載し、出力重量比は大幅に向上しているため、59式に比して機動性が高く、地盤の軟弱な場所や傾斜の厳しい土地での運用性は高い。

兵装は、59式戦車に搭載された100mmライフル砲より小型の62式54口径85mmライフル砲を採用した。口径が小型であるため、装弾数も47発と多い(後に装弾数62発に増量)。最大射程は1,200m。当初は単純な照準器のみ搭載されており、移動しながら砲撃する行進間射撃能力は無い。後に射撃統制装置暗視装置の追加装備で、原型に比べて射撃能力は遥かに向上した。

運用

キンシャサの軍事パレードに登場したザイール軍の62式軽戦車(1985年)

62式軽戦車は主にチベット内モンゴルなどの山岳地域や華南の低地など道路条件の悪い地域で重宝され、中国人民解放軍陸軍向けだけで約800輌が配備された。積極的な輸出も行われ、北ベトナム(200輌)、スーダン(70輌)、ザイール(40輌)、バングラデシュ(40輌)、アルバニア(35輌)、北朝鮮(不明)、タンザニア(30輌)と多方面に輸出された。

中国では1979年の中越戦争で実戦投入されたが、装甲の薄さによる脆弱性を露呈した。特に携帯火器であるRPGによる攻撃で数多くの車輌が撃破された。これを教訓に、翌1980年には装甲を中心に改良が施された62式改軽戦車が開発された。

2000年に105mm低反動砲の搭載やERA装着など延命措置としての改良が行われ、その後も約500輌近くが中国国内で使用されていた。

その後2011年には中国で完全に退役している[1]。後継として97式歩兵戦闘車中国語版(ZBD-97)が開発され、04式歩兵戦闘車(ZBD-04)として制式化された。また、これとは別に山岳地域での運用を念頭においた新型軽戦車が「高原猛虎」の仮称で試作され、15式軽戦車として2018年から中国で配備が開始されている[2][3]

各型及び派生型

62式軽戦車(WZ-131)
初期量産型。
62-I式軽戦車(WZ-131-I)
WZ-131-1
1964年試作完成。装弾数を62発に増やし、T型マズルブレーキ搭載の新型戦車砲と砲安定装置、暗視装置を搭載した。文化大革命による混乱で量産計画が中断し、試作のみに終わった。
62-IA式軽戦車(WZ-131A)
文化大革命後、62-Iを基に改めて計画された改良型。開発プランのみで生産されず。“70式軽戦車”の名称でも呼ばれた。
62式改軽戦車(WZ-131-II/WZ-131G)
1980年代に入り、中越戦争での教訓から改修が加えられた改良型。改革開放政策により西側の技術が導入されており、新たにレーザー測定器やサイドスカート、HEAT弾やRPG対策として装甲が強化されるなどの強化が行われた。“62-II式軽戦車”とも呼ばれる。
62-IID式軽戦車(WZ-131-IID)
2000年より改修が実施された延命型。105mm低反動砲を搭載。新型複合装甲、FCSの強化、新型暗視装置の搭載など。
62-IIM軽戦車(WZ-131-IIM)
砲塔を前面部を複合素材とした溶接構造のものに変更した発展型。対HEAT弾対策としてERA(爆発反応装甲)も追加装着される。
62式軽戦車 115mm滑腔砲搭載型
北朝鮮が計画した、主砲をU-5TU 115mm滑腔砲に換装した武装強化型。
北朝鮮の出資により北方工業公司(NORINCO)が生産を担当する計画であったが、ソビエトが北朝鮮向け専用型のみの一時的なものであってもU-5TUのライセンス権を中華人民共和国に供与することに同意しなかったため、計画が中止され生産はなされなかった。

ギャラリー


採用国

採用国(赤)、濃い赤が退役国( 北朝鮮)
アルバニア[4]
マリ[4]
バングラデシュ[4]
カンボジア[4]
 コンゴ民主共和国[5]
コンゴ共和国[4][5]
スーダン[4]
タンザニア[4]
 ベトナム
タイ[5]

登場作品

World of Tanks
中国軽戦車WZ-131として開発可能。また、Type 62として販売。
War Thunder
ソ連陸軍ツリーで「Type-62」としてイベント『War Thunder Winter Holiday』の景品として、また、ver1.91にて追加された中国ツリーrankIV軽戦車「Type62」として登場

脚注

  1. ^ ZTQ-15 light tank”. military-today.com. 2019年12月2日閲覧。
  2. ^ 新型軽戦車「高原の猛虎」第二次世界大戦期の「延長モデル」と入れ替えか
  3. ^ 轻型装甲方队:15式轻型坦克首次亮相国庆阅兵”. 新華通訊社. 2019年12月2日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g SIPRI Arms Transfers Database
  5. ^ a b c B., David (11 November 2014). “Type 62 Light Tank”. tanks-encyclopedia.com. 2020年3月15日閲覧。[信頼性要検証]

関連項目

外部リンク


62式軽戦車(WZ-131)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/12 07:43 UTC 版)

「62式軽戦車」の記事における「62式軽戦車(WZ-131)」の解説

初期量産型

※この「62式軽戦車(WZ-131)」の解説は、「62式軽戦車」の解説の一部です。
「62式軽戦車(WZ-131)」を含む「62式軽戦車」の記事については、「62式軽戦車」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「62式軽戦車」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「62式軽戦車」の関連用語

62式軽戦車のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



62式軽戦車のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの62式軽戦車 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの62式軽戦車 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS