五人兄弟
『マハーバーラタ』 パーンドゥ王の第一夫人クンティーは、ユディシュティラ、ビーマ、アルジュナの3王子を産み、第二夫人マードリーは、ナクラ、サハデーヴァの2王子を産んだ。彼ら5人兄弟は、伯父ドリタラーシュトラの子供である百人の王子たちと、領土をめぐって戦う。両軍多数の将兵を率いての18日間にわたる大戦争に、5王子たちは勝利する。後に彼ら5王子たちは世を捨ててヒマラヤ山に登り、神々に迎えられて天界に入った〔*実際はパーンドゥ王の願いにより、神々がクンティーとマードリーに子種を授けた。パーンドゥ王は「性交中に死ぬ(→〔性交と死〕2)」と宣告されていたからである〕。
『若者のすべて』(ヴィスコンティ) 田舎から職を求めてミラノの町へ来た、母と5人兄弟の物語。長男ヴィンツェンツォは結婚して、自分の生活を守るのに精一杯である。次男シモーネ・三男ロッコはボクサーになるが、シモーネの愛人がロッコに心を移したため、シモーネは愛人を刺殺する。心優しいロッコはシモーネを責めず、かばおうとするので、四男チーロは怒って家を飛び出す。数日後、チーロの働く工場へ、末子ルーカが「シモーネが逮捕された」と知らせに来る。
*馬氏の5人兄弟(白眉の故事)→〔眉毛・睫毛〕4の『蒙求』569「馬良白眉」。
『ワイルドバンチ』(ペキンパー) 5人組の強盗団、パイク、ダッチ、ライル、テクター、エンジェルが、メキシコ政府のマパッチ将軍の要請で、アメリカ軍の輸送列車から武器弾薬を強奪して、1万ドルの報酬を得る。しかしエンジェルが武器1箱を革命派に渡したため、マパッチ将軍はエンジェルを捕らえて殺す。怒ったパイクたち4人は、ライフルや機関銃を乱射して、マパッチ軍2百人と戦う。4人は全身に弾丸を浴びて絶命するが、マパッチ軍も大半が死んだ。
『我等の仲間』(デュヴィヴィエ) 仲の良い友達、ジャン、シャルル、タンタン、マリオ、ジャックの5人が共同で買った宝くじが、10万フランに当たった。彼らは10万フランを山分けせずに、皆で田舎の土地と建物を買い、レストラン「我等の家」を始めようと相談する。しかし美女ユゲットや、シャルルの別れた妻ジーナが現れて、男たちの心に変化が生ずる。ジャックは1人、旅に出る。マリオはユゲットと外国へ去る。ジーナは夫シャルルから金をせびり取り、ジャンを誘惑する。タンタンはパーティの日、屋根から落ちて死ぬ→〔映画〕8。
天父地母と五人の息子の神話 天父と地母が5人の息子(太陽・月・火・風・霧)を産んだ。天父と地母はぴったり密着していたので、息子たちは活動の場がなかった。火と霧が天父を攻撃し、太陽と月と風が地母にぶつかって、ついに天父と地母は分離した。天父に敵対した火と霧は地上に残り、地母に敵対した太陽と月と風は天上に昇った(バルカン、ジプシー)。
『古事記』上巻 アマテラスが身につけている多くの勾玉を、スサノヲが口に入れて噛み砕き、吐き出す息の霧から、5柱の男神が生まれ出た。最初にマサカツアカツカチハヤヒアメノオシホミミノミコト(正勝吾勝勝速日天之忍穂耳命)、続いてアメノホヒノミコト、アマツヒコネノミコト、イクツヒコネノミコト、クマノクスビノミコトの順に生まれ出た。この5神はアマテラスの勾玉を物実(ものざね)として生まれたので、アマテラスの子とされた〔*マサカツアカツカチハヤヒアメノオシホミミノミコトの子がニニギノミコトである〕。
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