事業者等の責務
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/05 05:59 UTC 版)
事業者及び粉じん作業に従事する労働者は、じん肺の予防に関し、労働安全衛生法及び鉱山保安法の規定によるほか、粉じんの発散の防止及び抑制、保護具の使用その他について適切な措置を講ずるように努めなければならない(第5条)。事業者は、労働安全衛生法及び鉱山保安法の規定によるほか、常時粉じん作業に従事する労働者に対してじん肺に関する予防及び健康管理のために必要な教育を行わなければならない(第6条)。 本法においては、じん肺の予防に関する労使双方の努力義務を規定している。これは、じん肺の特殊性にかんがみ、特に予防に重点がおかれるべきであるとの認識に基づき、労働基準法その他の関係法令で定める基準に止まることなく、必要なじん肺の予防のための措置を講ずるよう努めるべきことを定めたものであるから、この趣旨に則り、労働基準法等関係法令の適正な運用と相まって、本法において創設された粉じん対策指導委員制度を活用し、各企業の実情に即した指導を行なわれたいこと(昭和35年4月8日発基47号)。 第6条は、じん肺の予防及び健康管理に十分な効果をあげるためには、常時、労働者に対し、それらに関して必要な知識を得させる必要があることから設けられているものであること。したがって、事業者は、単に雇入れ時に限らず、労働者に必要な知識を付与するよう措置する義務を負うものであるが、「必要な教育」の内容、時期、回数等は、医学及び衛生工学の進歩、技術の変革、更には事業場の実情等に応じてそれぞれ異なるべきものであり、これを一律化することは必ずしも適当ではないので、この運用に当たつては、各事業場の実情に即して最も効果的な方法により行うよう指導されたいこと。「常時粉じん作業に従事する」とは、労働者が業務の常態として粉じん作業に引き続いて従事することをいうが、必ずしも労働日の全部について粉じん作業に従事することを要件とするものではないこと(昭和53年4月28日基発250号)。 事業者は、じん肺健康診断を行ったとき、又はエックス線写真及びじん肺健康診断の結果を証明する書面が提出されたときは、遅滞なく、当該じん肺健康診断に関する記録を様式第三号により作成しなければならない。事業者は、この記録及びじん肺健康診断に係るエックス線写真を7年間保存しなければならない。ただし、エックス線写真については、病院、診療所又は医師が保存している場合は、この限りでない(第17条、施行規則第22条)。事業者は、じん肺健康診断を受けた労働者に対し、遅滞なく、当該じん肺健康診断の結果を通知しなければならない(施行規則第22条の2)。じん肺健康診断の実施の事務に従事した者は、その実施に関して知り得た労働者の心身の欠陥その他の秘密を漏らしてはならない(第35条の4)。 保存期間について、法制定時は5年間とされていたが、じん肺の病像の的確な判定及び健康管理対策の基礎資料として少なくとも前二回分のじん肺健康診断の記録及びじん肺健康診断に係るエックス線写真を確保する必要があるため、じん肺の所見のない者の定期健康診断の間隔(3年以内ごとに一回)を考慮して昭和53年の改正法施行により7年間に改めたものであること(昭和53年4月28日基発250号)。 事業者は、この法律及びこれに基づく命令の要旨を粉じん作業を行う作業場の見やすい場所に常時掲示し、又は備え付ける等の方法により、労働者に周知させなければならない(第35条の2)。 事業者は、この法律又はこれに基づく命令の規定による措置の実施に関し、労働者の心身の状態に関する情報を収集し、保管し、又は使用するに当たつては、労働者の健康の確保に必要な範囲内で労働者の心身の状態に関する情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならない。ただし、本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合は、この限りでない。事業者は、労働者の心身の状態に関する情報を適正に管理するために必要な措置を講じなければならない。厚生労働大臣は、この規定により事業者が講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表するものとする(第35条の3)。現在、平成30年度から令和4年度までの5年間を推進期間とする「第9次粉じん障害防止総合対策」(平成30年2月9日基発0209第3号)が公表されている。 厚生労働大臣、都道府県労働局長及び労働基準監督署長は、この法律の目的を達成するため必要な限度において、事業者に、じん肺に関する予防及び健康管理に関する事項を報告させることができる(第44条)。事業者は、毎年、12月31日現在におけるじん肺に関する健康管理の実施状況(じん肺健康管理実施状況報告)を、翌年2月末日までに、様式第八号により当該作業場の属する事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長を経由して、所轄都道府県労働局長に報告しなければならない。事業者は、この報告のほか、じん肺に関する予防及び健康管理の実施について必要な事項に関し、厚生労働大臣、都道府県労働局長又は労働基準監督署長から要求があったときは、当該事項について報告しなければならない(施行規則第37条)。 粉じん作業を行う事業に係る事業者で、当該年にじん肺健康診断を実施しなかった事業者も、じん肺健康管理実施状況報告を行う必要があること(昭和53年4月28日基発250号)。
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