じん肺健康診断
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/05 05:59 UTC 版)
この法律の規定によるじん肺健康診断は、次の方法によって行うものとする(第3条1項)。事業者は、第7条から第9条の2までの規定により行うじん肺健康診断を受けた労働者に対し、遅滞なく、当該じん肺健康診断の結果を通知しなければならない(施行規則第22条の2)。 粉じん作業についての職歴の調査及びエックス線写真(直接撮影による胸部全域のエックス線写真をいう。以下同じ。)による検査「直接撮影による胸部全域のエックス線写真」とは、背腹位の胸部写真をいうものであって、側位、斜位等の多方向撮影、断層撮影等によるものは含まれないものであること(昭和53年4月28日基発250号)。 胸部に関する臨床検査及び肺機能検査この検査は、1.の調査及び検査の結果、じん肺の所見がないと診断された者以外の者について行う。ただし、肺機能検査については、エックス線写真に一側の肺野の3分の1を超える大きさの大陰影(じん肺によるものに限る。以下同じ)があると認められる者その他厚生労働省令で定める者を除く(第3条2項)。「じん肺の所見がないと診断された者以外の者」とは、じん肺の所見があり、又はじん肺にかかっている疑いがあると診断された者をいうこと(昭和53年4月28日基発250号)。 「胸部に関する臨床検査」は、次に掲げる調査及び検査によって行うものとする(施行規則第4条)。既往歴の調査 胸部の自覚症状及び他覚所見の有無の検査 「肺機能検査」は、次に掲げる検査によって行うものとする(施行規則第5条)。スパイロメトリー及びフローボリューム曲線による検査 動脈血ガスを分析する検査 昭和53年の改正法施行により、「一側の肺野の2分の1」が「3分の1」に改められた。これは、一側の肺野の3分の1を超える大陰影がある者は一般に肺機能等の障害が強いことが明らかにされており、かつ、ILOの分類でも大陰影の区分の基準に3分の1が採用されていることに基づいたものであり、これらの者はじん肺管理区分が管理四としてそれのみで療養を要することとなるからであること(昭和53年4月28日基発250号)。 結核精密検査その他厚生労働省令で定める検査「結核精密検査」は、次に掲げる検査によって行うものとする。この場合において、医師が必要でないと認める一部の検査は省略することができる(施行規則第6条)。結核菌検査 エックス線特殊撮影による検査 赤血球沈降速度検査 ツベルクリン反応検査 「厚生労働省令で定める検査」(肺結核以外の合併症に関する検査)は、次に掲げる検査のうち医師が必要であると認めるものとする(施行規則第7条)。結核菌検査 たんに関する検査 エックス線特殊撮影による検査 この結核精密検査は1.及び2.の調査及び検査(肺機能検査を除く。)の結果、じん肺の所見があると診断された者のうち肺結核にかかっており、又はかかっている疑いがあると診断された者について、この厚生労働省令で定める検査は1.及び2.の調査及び検査の結果、じん肺の所見があると診断された者のうち肺結核以外の合併症にかかっている疑いがあると診断された者(3.の厚生労働省令で定める検査を受けることが必要であると認められた者に限る。)について行う。ただし、エックス線写真に一側の肺野の3分の1を超える大きさの大陰影があると認められる者を除く(第3条3項)。 じん肺のエックス線写真の像は、以下に掲げるところにより、第一型から第四型までに区分するものとする(第4条1項)。 第一型 両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が少数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの 第二型 両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が多数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの 第三型 両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が極めて多数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの 第四型 大陰影があると認められるもの「大陰影」とは、じん肺による融合陰影や塊状陰影で、その長径が10ミリメートルを超える陰影をいうこと(昭和53年4月28日基発250号)。 事業者は、じん肺健康診断を行った場合においては、その限度において、労働安全衛生法第66条1項又は2項の健康診断を行わなくてもよい(第10条)。 「じん肺健康診断を行った場合」とは、必ずしも第7条から第9条の2までの規定によるじん肺健康診断を行つた場合に限定されるものでなく、第16条の規定による随時申請を行うためのじん肺健康診断その他事業者が任意にじん肺健康診断を行った場合も含むものであること。「その限度において」とは、例えば、エックス線検査を行った場合はエックス線検査、胸部に関する臨床検査を行った場合は胸部に関する臨床医学的検査、結核精密検査を行つた場合はかくたん検査を行わなくてもよいということ等のようにじん肺健康診断の検査に相当する検査を行わなくてもよいという趣旨であること(昭和53年4月28日基発250号)。 関係労働者は、正当な理由がある場合を除き、事業者が行うじん肺健康診断を受けなければならない。ただし、事業者が指定した医師の行うじん肺健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師の行うじん肺健康診断を受け、当該エックス線写真及びじん肺健康診断の結果を証明する書面その他厚生労働省令で定める書面を事業者に提出したときは、この限りでない(第11条)。 「正当な理由がある場合」とは、疾病、忌引等社会通念上労働者に受診を強要することができない場合をいうものであること。「厚生労働省令で定める書面」は、当面定める予定がないこと(昭和53年4月28日基発250号)。
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