一般的な生物との違い
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 14:23 UTC 版)
一般的な原核生物(例:大腸菌)マイコプラズマナノアルカエウム・エクウィタンスリケッチアクラミジアファイトプラズマウイルス構成単位細胞 ウイルス粒子 遺伝情報の担体DNA DNAまたはRNA 増殖様式対数増殖(分裂や出芽) 一段階増殖暗黒期の存在 ATPの合成できる できない できる できない タンパク質の合成できる できない 細胞壁ある ない ある ない 単独で増殖できる できない(他生物に付着) できない(偏性細胞内寄生性) ウイルスは以下のような点で、一般的な生物と大きく異なる。 非細胞性で細胞質などは持たない。基本的にはタンパク質と核酸からなる粒子である(→ウイルスの構造)。 大部分の生物は細胞内部にDNAとRNAの両方の核酸が存在するが、ウイルス粒子内には基本的にどちらか片方だけしかない。 他のほとんどの生物の細胞は2nで指数関数的に増殖するのに対し、ウイルスは一段階増殖をする。また、ウイルス粒子が見かけ上消えてしまう「暗黒期」が存在する。 代謝系を持たず、自己増殖できない。他生物の細胞に寄生することによってのみ増殖できる。 自分自身でエネルギーを産生せず、宿主細胞の作るそれを利用する。 なお、4はウイルスだけに見られるものではなく、リケッチアやクラミジア、ファイトプラズマなど一部の細菌や真核生物にも同様の特徴を示すものがある。 細胞は生きるのに必要なエネルギーを作る製造ラインを持っているが、ウイルスはその代謝を行っておらず、代謝を宿主細胞に完全に依存し、宿主の中でのみ増殖が可能である。ウイルスに唯一できることは他の生物の遺伝子の中に彼らの遺伝子を入れる事である。厳密には自らを入れる能力も持っておらず、細胞が正常な物質と判別できず、ウイルスのタンパク質を増産するのを利用しているだけである。 これらの性質から、ウイルスを生物と見做さない言説も多いが、メガウイルス、ミミウイルスなど、細菌に非常に近い構造を持つウイルスも存在することから、少なくとも一部は遺伝子の大部分を捨て去り、寄生に特化した生物の一群由来であろうことが強く示唆されている。一方、レトロウイルスとトランスポゾンの類似性もまた、少なくとも一部のウイルスは機能性核酸が独立・進化したものである可能性を強く示唆している。つまり、ウイルスとして纏められている物は多元的であり、人為分類群である可能性が非常に高い。 しかしながら、その後の研究で、メガウイルスやミミウイルスなどの巨大ウイルスも、遥かに小さく典型的なウイルスからトランスポゾンを経て、比較的最近になって進化・巨大化した説が強くなっている。2019年、ICTVは、巨大ウイルスをウァリドナウィリアのバンフォルドウイルス界、巨大核質DNAウイルス門、メガウイルス綱に分類した。これは天然痘ウイルスやアフリカ豚熱ウイルスに比較的近い。両者はポリントンと呼ばれる、原生生物のDNA内に組み込まれているトランスポゾンから進化した可能性が高いとされる。これは、主要カプシドタンパク質やパッケージングタンパク質の比較から強く支持される。
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