ヴェーゲナーの大陸移動説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/27 07:11 UTC 版)
「大陸移動説」の記事における「ヴェーゲナーの大陸移動説」の解説
彼は、大陸が移動したという判断の根拠として、以下のようなものをあげている。 地形学的根拠 大西洋両岸の大陸を、海岸線ではなく大陸棚の端を使ってつなぎ合わせるとうまく一致すること。これは1965年にエドワード・ブラードらによって、コンピュータを使って水深約900m(500ファゾム)でつなぎあわせた図が作られ、その対応性がはっきりと示されている。 地球物理学的根拠 地殻表面の高さの頻度曲線をとると陸地と海底によって代表される2つのピークが存在する。これは大陸地殻と海洋地殻が2つの異なった層であり、もとから成り立ちが異なることを示している。大陸地殻はアイソスタシーのエアリーモデルをとると氷山のように海底地殻の上に浮かんでいるモデルが考えられ、地球表面を完全に覆い尽くしていないため、そこで大陸の水平移動の可能性が生じる。また、地殻を構成している物質も、地震波のような短周期では弾性体のように振舞うが、地質学的時間のスケールで力をかけ続けると、粘性率によっては流体のように振舞うだろうと述べた。 地質学的根拠 アフリカ、南アメリカ両大陸の大西洋両岸における地質構造の一致。例えば、ブエノスアイレスのシエラ・デ・ラ・ヴェンタナ山脈と南アフリカのケープ山脈の褶曲構造の一致やダイヤモンドを含む特殊な岩石キンバーライトの分布状況、ブラジルとアフリカの巨大な片麻岩台地の岩石や走向の一致など。これらは主にアレクサンダー・デュ・トワによって詳細に調べられた。 ヨーロッパと北アメリカの大西洋両岸の地層の一致。例えば、スコットランドのカレドニア山脈を横断している断層が、北アメリカのボストンからニューファンドランド島に広がっているカボット断層につながっていることをツゾー・ウィルソンが発見している。 古生物学的根拠 グロッソプテリスの分布、単弓類キノグナトゥス、リストロサウルス及び淡水生のメソサウルスの分布、ヨーロッパ全域と北アメリカのニューファンドランドの一部でみつかる三葉虫の分布状態など。 生物地理学的根拠 海を越えて渡ることができないミミズのある属 (Ocnerodrilidae, Acanthodrilidae, Octochaetidae)の分布、ある種の淡水ザリガニ(Limnocalanus macrurus)の分布など、いくつかの不思議な隔離分布が知られている。生物地理学ではこれを説明するのに陸橋説があったが、大陸移動があって、以前は陸続きであったとする方が遙かに説明がたやすいとした。 古気候学的根拠 現在は極地域にあるスピッツベルゲン島が過去に熱帯気候であったことの説明に極移動だけでは説明できないこと、古生代後期の氷河の分布が現在は熱帯である地域にまたがっているが、同時期の北半球には氷河の痕跡が見られないことなど。とくに南アメリカ東部の氷河の擦痕の方向が、現在は大西洋があるところから氷河が流れてきていることを示しているなど。これらは大陸が移動したとするとよく解決できる。
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