ローブナー賞
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ローブナー賞(英: Loebner prize)は、人工知能として最も人間に近いと判定された会話ボットに対して毎年授与される賞である。競技の形式は標準的なチューリングテストである。ローブナー賞では、人間の審判員が2つのコンピュータ画面の前に座る。一方の画面はコンピュータが表示を行い、もう一方は人間が表示を行う。審判員は両方の画面に対して質問を入力し、応答を得る。応答に基づき、審判員はどちらが人間でどちらがコンピュータかを判定する。
この大会はヒュー・ローブナーがマサチューセッツ州にある Cambridge Center for Behavioral Studies と共同で 1990年に開催したのが最初である。その後、フリンダース大学、ダートマス大学、イギリスのロンドンにあるサイエンス・ミュージアムなどが共催している。
人工知能の分野では、ローブナー賞は物議を醸している。批判の急先鋒であるマービン・ミンスキーは、ローブナー賞が単なる売名行為であって研究には何の寄与もしていないとした。
各賞
- 毎年、最も人間に近いと判定された会話ボットに 2000ドルが授与される。2005年には 3000 ドルとなったが、2006年には2250ドルだった。
- テキストによるチューリングテストで人間と区別が付かないと判定された最初の会話ボットに 25,000ドルが授与される予定。
- 音声によるチューリングテストで人間と区別が付かないと判定された最初の会話ボットに 100,000ドルが授与される予定。
100,000ドルの賞が授与された時点で、ローブナー賞は役目を終える予定である。
2008年の予定
2008年の競技会は2008年10月12日、イギリスのレディング大学で開催される予定。共催者の一人にケビン・ワーウィックが名を連ねており、アラン・チューリングが提案したオリジナルの形式のチューリングテストへの挑戦も行われる。優勝者には3000ドルと銅メダルが授与される。
2010年の予定
2009年9月6日にイギリスのブライトンでInterSpeech 2009と共に開催された、
2010年10月23日にアメリカのカリフォルニア州ロサンゼルスで開催予定。
歴代受賞者
年 | 優勝者 | プログラム |
---|---|---|
1991 | Joseph Weintraub[1] | PC Therapist |
1992 | Joseph Weintraub | PC Therapist |
1993 | Joseph Weintraub | PC Therapist |
1994 | Thomas Whalen | TIPS |
1995 | Joseph Weintraub | PC Therapist |
1996 | Jason Hutchens | HeX |
1997 | David Levy | Converse |
1998 | Robby Garner | Albert One |
1999 | Robby Garner | Albert One |
2000 | Richard Wallace | Artificial Linguistic Internet Computer Entity (A.L.I.C.E.) |
2001 | Richard Wallace | A.L.I.C.E. |
2002 | Kevin Copple | Ella |
2003 | Juergen Pirner | Jabberwock |
2004 | Richard Wallace | A.L.I.C.E. |
2005 | ロロ・カーペンター | George (Jabberwacky) |
2006 | ロロ・カーペンター | Joan (Jabberwacky) |
2007 | Robert Medeksza | Ultra Hal |
2008 | Fred Roberts and Artificial Solutions | Elbot |
2009 | David Levy | Do-Much More |
2010 | Bruce Wilcox | Suzette |
2011 | Bruce Wilcox | Rosette |
2012 | Mohan Embar | Chip Vivant |
2013 | Steve Worswick | Mitsuku |
2014 | Bruce Wilcox | Rose |
2015 | Bruce Wilcox | Rose |
2016 | Steve Worswick | Mitsuku |
2017 | Steve Worswick | Mitsuku |
2018 | Steve Worswick | Mitsuku |
2019 | Steve Worswick | Mitsuku |
脚注
- ^ “ローブナー賞, on season 4, episode 3” (英語). Scientific American Frontiers(英語: Scientific American Frontiers). PBS (1993-1994). 2006年時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年1月閲覧。
関連項目
外部リンク
ローブナー賞
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「チューリング・テスト」の記事における「ローブナー賞」の解説
詳細は「ローブナー賞」を参照 ローブナー賞では、チューリングテストを実際に行う場を毎年提供している。最初の大会は、1991年の11月に開かれた。ローブナー賞はヒュー・ローブナーによって開催され、アメリカマサチューセッツ州のケンブリッジ行動研究センター(the Cambridge Center for Behavioral Studies)が2003年まで運営していた。ローブナーが語ったように、大会の目的はAI研究を発展させることであり、また「それ(チューリングテスト)を実際にやろうとする人が誰もいなかった」ことも開催理由の一部である。 銀賞(聴覚)と金賞(聴覚・視覚)の受賞はまだない。だが、エントリーした中で、審判の意見による、「最も人間らしい(most human)」会話上のふるまいを見せたコンピュータシステムに毎年銅賞が贈られている。Artificial Linguistic Internet Computer Entity (A.L.I.C.E. 人工言語インターネットコンピュータ体)は近年3回(2000、2001、2004)銅賞を受賞している。学習型AIのJabberwackyは2005年と2006年に受賞している。Jabberwackyの制作者たちは、テストの通過のため、テストの前に人間のプレイヤーと長く会話しておき、テストの際はこのプレイヤーの真似に専念する、という個人化バリエーションの機能を導入した。 ローブナー賞で試験されるのは会話上の知性である。受賞プログラムは典型的な会話ボットであり、人工話者(英語版)である。初期のローブナー賞では会話の制限がルールとなっていた。エントリーされたプログラムや隠れた人間が話すのは一つの話題のみで、同様に、質問者も一回につき一行のみに制限された質問を行っていた。この会話制限のルールは1995年のローブナー賞では取り払われ、様々な長さの会話がなされるようになった。サリー大学で行われた2003年のローブナー賞では、質問者はプログラムもしくは人間の相手と5分間話すことができた。2004年から2007年は、20分以上会話に時間をとってもよいことになった。2008年には質問の制限時間は1組あたり5分になった。これは主催者のケビン・ウォーリック(Kevin Warwick )とまとめ役のヒューマ・シャー(Huma Shah )が、長い会話をしたからといって、人工話者がほんとうに進歩したとはいえないと考えたためであった。皮肉にも、2008年の受賞プログラムのエルボットは人間を真似るものではなかった。個性はロボット自身のものだったにもかかわらず、人間と並行比較して、3人の質問者を騙し、人間だと思わせた。 ローブナー賞により、チューリングテストの現実性や、テストを実行する意義について新たに議論が巻き起こった。エコノミスト誌は、「artificial stupidity」(人工馬鹿)というタイトルの記事中で、最初のローブナー賞受賞プログラムの受賞理由(少なくとも理由の一部)が、「人間らしいタイプミスを真似」できたからだと書いている(チューリングは、出力にミスを加えれば、プログラムはゲームのより良い「プレイヤー」になると勧めている)。チューリングテストの通過に挑戦するのは他の実のある研究の邪魔になるだけだと言うものもいる。ローブナー賞の初期に第二の問題が起こった。「単純な(unsophisticated)」質問者を使ったため、知性と思われる何らかの要素よりも、器用に作られたごまかしが通過できたということである。ローブナー賞は2004年から質問者の中に哲学者・計算機科学者・ジャーナリストを配している。
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