レース走行
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/15 13:31 UTC 版)
レースでの高速走行のためのテクニックのひとつである左足ブレーキについて述べる。以下の説明は一般乗用車の通常の走行とは前提が異なる。 レーシングカーは車高と共に着座位置が低く、両足を前方に伸ばした姿勢で乗車する。その場合、骨格的に左足をブレーキペダルの位置に置いていても不用意に踏まずにいられる。また、競技中で常に神経を配っているという点もある。更に、競技用シートに競技用シートベルトで体を固定しているので、左足を床に置かなくても姿勢を固定できる。 左足ブレーキでは右足が自由になるので、左足のブレーキペダル踏み込みと同時に右足でアクセルペダルを踏み込むことも可能になる。高度な走行においては、アクセルペダルは文字通りの「加速のためのもの」ではなく、「エンジンに出力を指示するもの」として制動中であっても制御を必要とする。例えばターボなど過給器で大出力にチューンされたエンジンは、回転数が一旦下がると上がるのが鈍い傾向がある。カーレースでは当然の操作法であり、とりわけジムカーナで多用される。 近年のF1など、クラッチペダルのない一部レーシングカーでは、ペダル踏み替えの時間を短縮するために、右足はアクセルペダル、左足はブレーキペダル、と両足を使い分けるように設計されている。ブレーキを踏むと荷重が前方にかかるがこれを緩和するために同時にアクセルを踏む、アクセルを踏むと荷重が後ろにかかるがこれを緩和するためにブレーキを踏む、後輪駆動でリアサスペンションにアンチスクォートジオメトリが採用されている場合はリアの車高を制御出来るなど、両方のペダルを同時に操作することがある。ただし、この操作はセミオートマチックトランスミッションもしくはドグミッションによりクラッチ操作が不要となっている競技車両であるために有効なテクニックであり、ブレーキ性能がアクセル性能に勝る一般の市販車ではあまり有効ではない。 ポール・フレールは1952年、スパ・フランコルシャン・サーキットでのツーリングカーレースに4速AT搭載のオールズモビル・88で出場することになり、左足が空くことに気付いて左足ブレーキ活用を着想、これを駆使して優勝している。これはパワーが過剰でブレーキ性能は不足していた当時のアメリカ製市販車の特性を補った工夫といえる。 レーシングカートでは、トランスミッションが存在しないため、右足にアクセルペダル・左足にブレーキペダルと明確に配置するのが通常である。そのためかつては「左足ブレーキはカート上がりのレーシングドライバーが使うテクニック」と思われていた時代もあった。 クラッチ操作が必要な3ペダルのシンクロナイザ付きマニュアルトランスミッション搭載車では左足ブレーキは非常に難しいためほとんど使われず、代わりに右足だけでアクセルペダルとブレーキペダルを同時に制御するヒール・アンド・トウが多用される。 また、ターボチャージャーを搭載していた頃のF1ではターボラグによる加速の遅れに対処するため、コーナリング中にブレーキを踏んで減速しながらアクセルを同時に踏み込み、コーナー脱出時までターボチャージャーの回転を落とさないように各ドライバーが工夫していた。
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