マルソウダ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/01 01:13 UTC 版)
マルソウダは血合いが多く、血合い由来とされる独特のうまみが強い魚だが、高知工科大学の研究によれば同じくサバ科の海水魚で傷みが早いとされるゴマサバと同じ冷蔵保存条件で比較したところ「いずれも約2倍の速さで鮮度低下が進む傾向にある」ことが判明した。 実験内容は「三津大敷組合(高知県室戸市)が大型定置網にて漁獲したマルソウダ・ゴマサバを漁獲直後に漁船内の冷海水で野絞めした上で水揚げ後に3種類の冷媒(海水氷・塩分濃度1.0wt.%のスラリーアイス・塩分濃度3.5wt.%のスラリーアイス)とともに内容積50リットル(L)のクーラーボックスに入れて設定温度4℃の冷蔵庫に保管」し、24時間おきに最大72時間まで3匹ずつサンプリングを行ったものである。 サンプリングに当たりそれぞれの魚の鮮度指標「K値」(20%以下で生食可能、20%超50%以下の範囲で加熱調理推奨、60%以上になると腐敗=食用不適とされる)・食中毒の原因となるヒスタミン含有量などを調べた結果、以下のいずれの方法においてもヒスタミンは検出されなかったが、冷媒の種類によって以下のように異なる実験結果が出た。なおゴマサバの場合は以下いずれの3条件においても「K値」は72時間後も20%に達せず生食可能な鮮度が維持された。このうち市場で最も用いられている海水氷による保存の場合、漁獲から約36時間で「K値」が20%に達し生食不適(加熱調理推奨)となる。 塩分濃度1.0wt.%のスラリーアイスに保存した場合、48時間以内ならば「K値」は20%に達せず生食可能な鮮度が維持されるが、約65時間で「K値」が20%を上回るため、それ以降は加熱調理が推奨される。 塩分濃度3.0wt.%のスラリーアイスに保存した場合、72時間後でも「K値」は20%に達せず生食可能な鮮度が維持された。なおこの鮮度変化は1.と同じ要領で海水氷に保存したゴマサバとほぼ同レベルだった。 このようにマルソウダは特に傷みが早く、死後に時間が経過するとヒスチジンから多量のヒスタミンが生成されることでヒスタミン中毒を起こしやすくなるため「生食は推奨されない」とされるが、村越正海は「釣れた直後に血抜きをして内臓・鰓を取り除き氷で保冷すれば刺身・たたきで生食できる」と述べている。産地周辺以外で鮮魚として流通することは非常に少なく、関東地方の卸売市場などでは「ほとんど見かけず、来ても非常に安い」魚で、一般的には加工品として出回る。本種は主に宗田節の原料とされることが多いが、節取りして蒸したものをフレークにしてサラダ・かき揚げ・そぼろなどに加工すると美味で、生利節(生節)・煮物・唐揚げ・干物・焼き魚などでも食べられる。煮付けはやや硬いが、旬の時期の煮付けは特に絶品で魚すき(魚のすき焼き)・生利節でも旨い。 一方で高知県須崎市・高岡郡中土佐町では、水揚げしたてのマルソウダの幼魚を「メジカの新子」と呼んで珍重し、8月 - 9月下旬のわずか約1か月間のみ、刺身で食べる食文化がある。マルソウダの多くを水揚げしている須崎漁港(須崎市)・釣り漁法にて水揚げしている久礼漁港・上ノ加江漁港(いずれも中土佐町)周辺の地域においては、マルソウダの刺身は「すぐに当たる(食中毒になる)魚」と認識されてはいるものの「漁獲した当日中のみ刺身で食べられる」という制約の下で「時にはカツオの刺身以上の高級食材」として流通している。「メジカの新子」は中土佐町の久礼大正町市場などで季節の風味として親しまれてきたほか、最近では大産地として知られる同県土佐清水市でも提供が始まっている。 また鹿児島県南さつま市笠沙(旧:鹿児島県川辺郡笠沙町)でも幼魚を刺身で食べる食文化がある。
※この「マルソウダ」の解説は、「ソウダガツオ」の解説の一部です。
「マルソウダ」を含む「ソウダガツオ」の記事については、「ソウダガツオ」の概要を参照ください。
固有名詞の分類
Weblioに収録されているすべての辞書からマルソウダを検索する場合は、下記のリンクをクリックしてください。

- マルソウダのページへのリンク