ペヨーテ狩り
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/20 03:10 UTC 版)
10月から2月の乾季になると、ウイチョル族は年に一度のペヨーテ(ヒクリ)の採取のためにサン・ルイス・ポトシ地域のウィリクタ(英語版)(Wirikúta、Wirikuta)という聖地まで旅を行う。ウィリクタはウイチョル族にとってペヨーテが豊かに生育する先祖代々の地であり、ペヨーテ狩りは楽園ウィリクタへの回帰、原型の始まりと神話の歴史の終わりと見做されている。ウィリクタへの最初のペヨーテ狩りの旅はシャーマンの祖にしてウイチョル最古の神であるタテワリ(英語版)によって先導された。現代のシャーマンとタテワリは幻影や鹿の姿をした文化英雄カウユマリ(Kauyumári)を介して交信を行う。巡礼者たちは通例10人から15人でシャーマンに導かれて旅を行う。巡礼者たちは儀式に必要不可欠なタバコ用の細口瓶や、ウィリクタから採集した水を故郷へと運んでいくための細口瓶を携行する。かつては徒歩で200マイルの旅が行われていたが、今日では車を用いる場合が多い。巡礼者たちはウィリクタへ旅立つ前に自らの性体験の告白を伴う懺悔とお清めの儀式を受けなければならない。旅の間、食事や性交渉、睡眠は神々に倣って差し控えられ、ウィリクタの神聖な山々が見える場所に着くと、巡礼者たちは儀式に従って清められ、恵みの雨を祈る。そしてシャーマンが詠唱を行っている最中に「頭の中の地図」に従って雲の関門や雲の通路を抜ける2つの感動的な段階を踏むことにより、あの世への旅を始める。いよいよペヨーテ狩りの場所に到着するとシャーマンは儀式を始め、ペヨーテにまつわる古来の物語を話し、安全の祈願を行う。巡礼者たちの中でも特に初めての参加者たちは目隠しをされた状態でシャーマンのみに見える「宇宙の入口」にいざなわれる。シャーマンの詠唱の最中に司祭たちが立ち止まって蝋燭を灯し、祈りの言葉を呟く。ようやくペヨーテを見つけるとシャーマンは鹿の足跡を暫く眺め、矢でペヨーテを射る。巡礼者たちはその年初めてのペヨーテを射られた鹿になぞらえて詠歌やトウモロコシの種子といった捧げ物を行い、かご一杯になるほどペヨーテを採取する。次の日になると更に多くのペヨーテが集められるが、その一部は故郷で待っている人々と分け合い、更にその残りはやはりペヨーテを使用するコラ族やタラフマラ族のために売り出されることとなる。その後にはタバコ配りの儀式が行われるが、ウイチョル族はタバコを火と結びつけて考えている。この儀式ではまず磁石の4方位に向けて矢が置かれ、真夜中に火が焚かれる。するとシャーマンは火の前にタバコを置き、それに羽飾りで触れつつ祈り、巡礼者一人一人にタバコを配る。各人はタバコの誕生の象徴である細口瓶に配られた物を入れる。 なお、ウイチョル族はペヨーテ狩りに人類学者やメキシコの著述家が同行することを何度か許可している。
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