ウイチョル族とは? わかりやすく解説

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ウイチョル族

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/22 08:00 UTC 版)

ウイチョル族(ウイチョルぞく)あるいはウィチョール族(ウィチョールぞく、: Huichol; 自称はウィシャリカ (Wixárika[2][3]、Wixarica[3]、Wixarika[3]、Wizarika[4]) やウィラリカ (Wirrarika)[3][注 1]、複数人の場合は Wixaritari[5]、Vixaritari)とは、主にメキシコナヤリト州ハリスコ州に暮らす民族である。ナワトル語も属するユト=アステカ語族言語であるウイチョル語を話すが、人口約2万人のうち65パーセントはスペイン語も用いる[6]。伝統的に農耕を行うが出稼ぎ労働にも従事し(参照: #生活)、また本来は狩猟採集民であったという説が有力である(参照: #歴史)。色彩豊かな毛糸絵やビーズ細工といった民芸品の製作や(参照: #民芸品)、サボテンの一種であるペヨーテ(peyote; ウイチョル語ではヒクリ (híkuri、híkuli、hiculi[7]))にまつわる文化で知られている(参照: #習俗)。なお、農耕や出稼ぎ労働、儀礼、商売といったあらゆる活動を家族もしくは親族単位で行う傾向が見られる[8]


注釈

  1. ^ ウイチョル語には有声そり舌歯擦音が存在し[4]、たとえば Grimes (1964) などでは z で表されているが、文献によっては xzr などで表記されることもあり[4]、一定しない。
  2. ^ なお、いずれの民族の言語もユト=アステカ語族に属するが、Lewis et al. (2015) ではコラ語英語版の方がタラフマラ語英語版よりもよりウイチョル語に近いとされている。
  3. ^ 焼畑は山の 斜面に作られ、coamil と呼ばれる。[12]
  4. ^ ヒクリ・ロサパラ(Hikuli Rosapara)という別名も持つ。
  5. ^ 偽ペヨーテ (: false peyote) や、ヒクリ・スナメ (Hikuli Sunamé) という別名も持つ。日本語の園芸名は岩牡丹であるが、イワボタンと言うと多肉植物ではないユキノシタ科ネコノメソウ属ミヤマネコノメソウChrysosplenium macrostemon var. macrostemon)の別名でもある[25]
  6. ^ ウェイパトゥル(hueipatl)やテコマショチトゥル(tecomaxochitl)[27]というナワトル語由来の別名も持つ。
  7. ^ Tatewari。シュルテスら (2007:148) によるとその名は「私たちの祖父の火」である。また言語学的にも
    taa+-tewaríi-ma
    1pl.poss-祖父もしくは[† 1]-pl
    「我々の祖父たち」
    と分析される表現が存在するが、これは同時に特定の神々のサブクラスも指す[32]。タテワリは手や足でペヨーテを持った姿で擬人化されたペヨーテ神ヒクリとしても知られている[33]
  8. ^ 経験を積んだシャーマンはマラアカメ(ウイチョル語: maraʼakáme[35]; マラカメ[6]とも)と呼ばれる[33]
  9. ^ 文化的英雄ともいう。神話や伝説において創造力を有し、人間に地上での暮らし方などを教える存在であり、人間の姿をしている場合と動物の姿をしている場合とがある[36]
  10. ^ このようにウイチョル族が鹿を神聖視している点は、ウイチョル族が本来は砂漠地帯に暮らす狩猟採集民であったと推定する根拠の1つとされている[9]
  11. ^ 1つ1つの罪に関してシャーマンが紐に結び目をつくり、儀式の最後に燃やす[33]

注釈の注釈

  1. ^ なお、ウイチョル族は祖父と孫世代の間の関係性については同一性、平等性、相互性のあるものと考えており、親族名称は一方の世代からもう一方の世代に向けて全く同一のものが使用され得る[30]。ウイチョル語で tewaríi(あるいは tewaríteʼvali とも)は〈祖父〉と〈孫〉、〈大おじ〉と〈甥または姪の息子〉を男性同士で相互に表す語彙であるが、ほかにも〈祖父母〉と〈孫(娘)〉の両方を表す teukári が存在し[31]、あるウイチョル族は、祖父と孫とは同じ肉体からなる存在であり、互いを Neteukari〈私の teukári〉と呼び合うと述べている[30]

出典

  1. ^ a b c d Lewis et al. (2015).
  2. ^ a b Schaefer & Furst (1996:531).
  3. ^ a b c d e f 山森 2017, p. 136
  4. ^ a b c 八杉 (1988).
  5. ^ 山森 2015, p. 134
  6. ^ a b c d e f g h 落合 (2009).
  7. ^ Schaefer & Furst (1996:524).
  8. ^ 山森 2017, p. 134.
  9. ^ a b c d e f g 山森 2017, p. 129-130
  10. ^ a b c d e f シュルテスら (2007:147).
  11. ^ a b c d e f g h i 山森 2015, p. 123
  12. ^ a b c d 山森 2015, p. 121-122
  13. ^ 山森 2017, p. 130-131.
  14. ^ a b c 山森 2017, p. 129
  15. ^ 山森 2015, p. 122.
  16. ^ 山森 2015, p. 133.
  17. ^ a b c d e 山森 2015, p. 122
  18. ^ Schaefer & Furst (1996:527).
  19. ^ 山森 2015, p. 123-124.
  20. ^ 山森 2015, p. 124.
  21. ^ 山森 2015, p. 132.
  22. ^ a b 山森 2017, p. 135
  23. ^ シュルテスら (2007:74,78).
  24. ^ Schaefer & Furst (1996:530).
  25. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-).「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList),http://ylist.info2018年6月8日閲覧。)
  26. ^ Schaefer & Furst (1996:525).
  27. ^ シュルテスら (2007:72).
  28. ^ シュルテスら (2007:67,70-71,72-73).
  29. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s シュルテスら (2007:148-150).
  30. ^ a b Myerhoff (1974:66).
  31. ^ Schaefer & Furst (1996:529).
  32. ^ Grimes (1964:31).
  33. ^ a b c d シュルテスら (2007:148)
  34. ^ シュルテスら (2007:62,148).
  35. ^ Schaefer & Furst (1996:526).
  36. ^ ハーツ (2003:xiii).


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