ヘルメット潜水の利点・欠点など
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/12/05 22:53 UTC 版)
「ヘルメット潜水」の記事における「ヘルメット潜水の利点・欠点など」の解説
空気供給ホースの存在ヘルメット潜水が開発されたのは、当時十分な量の空気を水中へ携行できる圧力容器が存在しなかったという純粋に技術的な理由によるものだが、水上の空気供給設備さえ稼動していれば空気の供給能力による潜水時間の制限が事実上存在しない利点があるともいえる。しかし、空気供給ホースが水中の障害物に引っ掛かるという危険性が常に存在するうえ、たとえばトンネル状の通路を通りぬけて反対側で浮上するようなことが不可能であるなど、ダイバーの水中での行動に大きな制約を与えているということも事実である。また空気供給ホース自体が損傷を受けた場合、空気の供給が完全に途絶してしまう危険性もある。 ヘルメットと潜水服が一体となって気密(水密)空間を構成していること一時的にダイバーへの空気供給量が低下してもヘルメットと潜水服で構成される気密空間内の空気は比較的多いため、ダイバーの呼気はある程度希釈され二酸化炭素濃度が急激に上昇することはない。そのため状況にもよるが、空気の供給が完全に停止してもおおむね5分程度以上は生存可能であるとされている。ただ、これはあくまでも結果論であり空気供給の不安定性の裏返しでしかない。また気密空間内の空気が多いということは換気の効率が悪いということでもあり、給排気の調節が不適当だと逆に二酸化炭素濃度の上昇を招きやすいという欠点もある。 手動による空気供給と浮力の調整ヘルメット潜水では、スクーバなど近代的な潜水装置とは異なり空気の給排気がダイバーの呼吸に応じて自動的に調整されるわけではない。そのためダイバー自身が空気供給ホースの調整バルブとヘルメットの排気バルブの双方を操作し、呼気で汚れた潜水服内の空気を換気するために十分な空気が供給され、かつ空気供給量に応じた排気が行われるよう調節しなければならない。空気供給量に対して排気量が少なければ潜水服内の空気の量が増加するため浮力も増加し、逆に排気量が多ければ浮力が減少するが、浮力の調整を誤って浮力を増やし過ぎると吹き上げと呼ばれる急激な浮上を引き起こし、減圧症などの高気圧障害の原因となることがある。逆に浮力を減らし過ぎると、空気の供給が追いつかずにどんどん深みへと墜落し、窒息死したり潜水服が水圧で押しつぶされて傷害を負ったりすることがある。この場合、硬いヘルメットは変形しないので、身体がヘルメットに押し付けられて鎖骨などを骨折したり、ひどい場合には身体全体が押しつぶされてヘルメットの中に押し込まれてしまう例もあるといわれている。このような墜落は作業中に足場を踏み外したような場合にも起こりうる。 装備の重量が大きいことヘルメット潜水では、前述のように装備の総重量は80 - 90kgに達するため、水上では一人で移動することは困難である。また水中でも、フィン(足ひれ)を使用して泳ぐのではなくほとんど水底を這うように歩いて移動する必要がある。しかし装備の重量が大きいことは、逆に潮の流れなどの中でも安定した作業が可能になるという利点につながる。 作業潜水での安全性ヘルメット潜水では手の先のごく一部しか水に触れないので、比較的低水温でも長時間の作業が可能なうえ汚染された環境でも比較的安全な作業が可能である。また、硬いヘルメットで頭部が完全に保護されているため溶接・溶断や爆発などを伴う作業に対する安全性も高いなど作業潜水に対し適合性が高い。さらに命綱や電話装置を併用することにより、ダイバーが行方不明となる可能性は極めて低いうえ、常に音声による連絡が可能なため水面からダイバーに対し作業の指示や支援が可能であるとともにダイバーが危険な状況に陥った場合でもすぐに水上で気付くことができる。最悪の場合命綱でダイバーを引き揚げることも可能である。
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