プロダクトとユニバーサルデザイン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/11 01:55 UTC 版)
「ユニバーサルデザイン」の記事における「プロダクトとユニバーサルデザイン」の解説
近代以降の工業製品は、大量生産技術の発達とともに大衆化し、多くの人々が科学技術の成果を享受できるようになった。企業活動として同じものを大量に生産する過程において、つくる側が想定するユーザ像は、できるだけ多くの人に使えるようにと考えると、「平均的な人」あるいは「平均的な世帯」とせざるを得なかった。この結果、想定されたユーザ像から外れる人にとっては、その製品は「使えないモノ」あるいは「使いづらいモノ」でしかなかった。 デザインが排除してきたこれらのユーザ特性に対して、デザイナがその存在を意識し、デザインの初期段階から対応策を検討することで、合理的な範囲で少しでも多くの人をユーザの中に包摂する可能性がある。あらゆる条件に一つのデザインで対応することはほとんど不可能であるが、標準的なデザインから離れて特別なユーザニーズに応えるデザインは、価格上昇につながるかあるいは他の大多数には不要な機能となり、商品となりにくい。しかし、高機能化とユーザグループの拡大という二つのベクトルの合成方向を目指したデザインを行うと、市場原理に沿った製品開発が可能である。たとえば、製品上の小さな文字表示や、難解な操作方法は、多数のユーザも不満を抱えていたに違いないが、他に選択肢がないため仕方なしに購入するよりなかった。そもそも見えない、聞こえない、手が使えないといった状態は、障害のある人だけの問題ではなく、環境条件や置かれている状況次第では一時的にせよ誰にでも起きる問題である。従来は少数派のニーズとして片付けられてきたことの中に、実は多くの人が抱えてきた問題が潜んでいることは少なからずある。それらを解決した事例としては、温水洗浄便座、ライター、レバー式ドアハンドルなどがある。手を触れずに何かができるという機能は、感染症対策上も有効である。 社会の高齢化が急速に進んでいる今、人口の1/4を超える高齢者をユーザから除外して経営は成り立たない。企業としては、ユーザ満足度を高め、少しでも多くの人をユーザとして取り組み、市場占有率を高めなければならず、今後高齢化が急速に進む東アジア市場に対する戦略としても重要である。 個別のユーザニーズを大量生産される製品に取り入れることは現実的に難しいが、3Dプリンティング技術やIoT技術は個別対応を可能とする。大量生産品に対してこれらを組み合わせることで、個別の細かなニーズへの対応の可能性が見えてきている。例えば、家具メーカのイケアが行っているソファなどの座面を高くする足の3Dデータの提供と出力サービスの試み(ThisAbles.com)や、スマートスピーカによる家電製品の操作などの応用がある。製品に対する改造と判断されてしまうと製造物責任法(PL法)上問題となるかも知れないが、未だにユーザとして包摂されていない重度な障害のある人にとって、一つの可能性となるのではと期待されることもあります。
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