ビグアニド
(ビグアナイド系 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/08 14:15 UTC 版)
ビグアニド | |
---|---|
![]()
構造式
|
|
イミドジカルボンイミド酸ジアミド |
|
別称
|
|
識別情報 | |
CAS登録番号 | 56-03-1 |
PubChem | 5939 |
ChemSpider | 5726 |
日化辞番号 | J4.565I |
EC番号 | 200-251-8 |
KEGG | C07672 |
ChEBI | |
バイルシュタイン | 507183 |
Gmelin参照 | 240093 |
|
|
|
|
特性 | |
化学式 | C2H7N5 |
モル質量 | 101.11 g mol−1 |
関連する物質 | |
関連物質 | グアニジン |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
ビグアニド(Biguanide:英語風にビグアナイドともいう)は窒素を含む有機化合物。グアニジン2分子が窒素原子1個を共有して連なった構造をもつ。無色の固体で水に溶けて高塩基性を示す。水溶液はゆっくりと加水分解してアンモニアと尿素を生成する[1]。
またその誘導体も一般にビグアニドと呼ばれ、これには次のように抗糖尿病薬(経口血糖降下薬)のほか、抗マラリア薬や殺菌薬・消毒薬が含まれる。特にビグアニド系抗糖尿病薬をビグアナイドと呼ぶことが多い。
抗糖尿病薬:
-
フェンホルミン―フェネチル誘導体
抗マラリア薬:
殺菌薬・消毒薬・抗菌剤:
ビグアニド系抗糖尿病薬
識別 | |
---|---|
KEGG | DG01684 |
中東原産のマメ科のガレガソウ(Galega officinalis )[3]は古くから民間薬として糖尿病に用いられたが、1920年代にこれからガレジンなどのグアニジン誘導体が見出され、動物試験でこれらが血糖値を下げることが見出された。グアニジン誘導体のうち、毒性の低い化合物が糖尿病に適用されたが、インスリンの発見により下火となり、1950年代に2型糖尿病治療用に復活した。初めはフェンホルミンが使われたが、これは重大な副作用である乳酸アシドーシスのため使われなくなった。代わってブホルミン、さらにメトホルミンが用いられるようになったが、これらについても乳酸アシドーシスへの注意が必要である。ビグアニド系はインスリン分泌の促進を介するスルホニルウレア系などの血糖降下薬と異なり、1型・2型糖尿病ともに有効である。
メトホルミン、ブホルミンも稀ではあるが、乳酸アシドーシスを起こす可能性があるので、腎障害・肝障害の患者への使用は禁忌である[4]。側鎖の脂溶性が高い程、乳酸アシドーシスの危険性は高くなる[5]。
出典
- ^ Thomas Güthner, Bernd Mertschenk and Bernd Schulz "Guanidine and Derivatives" in Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 2006, Wiley-VCH, Weinheim. doi:10.1002/14356007.a12_545.pub2
- ^ a b c 高久史麿 著、堀正二ほか編 編 『治療薬ハンドブック2010』(2010年版)じほう、2010年1月15日。ISBN 978-4-8407-4037-1。
- ^ ガレガソウ (ヤクヨウガレーガ)(マメ科)、日本新薬
- ^ イヤーノート 2015: 内科・外科編 メディック・メディアD106 ISBN 978-4896325102
- ^ “メトグルコの適正使用のために〔メトホルミンと乳酸アシドーシスについて〕”. 2016年5月1日閲覧。
ビグアナイド系(BG薬)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 01:55 UTC 版)
「経口血糖降下薬」の記事における「ビグアナイド系(BG薬)」の解説
一般名血中半減期(hr)作用時間(hr)一日の使用量(mg)メトホルミン 1.5~4.7 6~14 250~2,250 ブホルミン 3 6~14 50~150 2014年のMadirajuらの論文 によってメトホルミンの標的分子が同定され、血糖降下、および乳酸が蓄積する機序も明らかとなった。メトホルミンの標的はミトコンドリアのグリセロールリン酸脱水素酵素であった(細胞質にも、このミトコンドリアの酵素と逆方向の反応を触媒するグリセロールリン酸脱水素酵素が存在するが、こちらはメトホルミンの標的ではない)。解糖系によりブドウ糖が(嫌気的に)酸化されピルビン酸が産生されるが、これに伴って還元物質であるNADHができる。 通常はNADHの還元能は、ミトコンドリアに移動して電子伝達系によりATP産生につながるわけだが、NADHがミトコンドリアの内膜を通過しないために、グリセロールリン酸シャトルが働いて還元物質(Reduction potential)がミトコンドリア内に移動する(NADHのミトコンドリアへの移動にはもう一つリンゴ酸-アスパラギン酸シャトルというシステムが存在する)。 メトホルミンは、ミトコンドリアのグリセロールリン酸脱水素酵素を阻害することにより、グリセロールリン酸シャトルの機能を阻害するため、細胞質でNADHの蓄積が起きる。このためピルビン酸を乳酸へ変換するとともに、NADH(とH+)をNAD+に変換する反応が進む。したがって多くの乳酸が蓄積することになる。 NADHが蓄積していると、ピルビン酸からオキザロ酢酸を介してブドウ糖新生(糖新生 gluconeogenesis)へ向かう経路を阻害することになる。またブドウ糖新生の基質のひとつであるグリセロールからグリセロールリン酸を介してブドウ糖新生への経路も阻害される。アミノ酸もブドウ糖新生への基質となるが、その中間産物のリンゴ酸からオキザロ酢酸への転換もNADHを産生するのでこの経路も阻害されると考えられる。 したがって、メトホルミンによる解糖系から電子伝達系への還元物質の転送阻害はブドウ糖新生を阻害し、血糖低下につながると考えられる。 エタノールがアセトアルデヒド、さらにアセチルCoAに代謝される際にもNADHができるため、アルコール飲用による低血糖も、同様にNADHが蓄積することによるものと考えられる。 メトホルミンは乳酸アシドーシスを起こしやすい病態、すなわち、肝障害・腎障害・心障害の既往がある患者には使用を避ける。ビグアナイドの内では、塩酸メトホルミンが主流である。塩酸ブホルミンは塩酸メトホルミンに比べて薬効が低く、乳酸アシドーシスを起こしやすい。欧米の糖尿病治療ガイドラインでは、メトホルミンを第一選択薬として推奨している。TZDとの合剤(商品名メタクト)等も販売されている。 その他の問題点は軽度の胃腸障害であるが、これは一時的なもので少量から開始し、ゆっくりと漸増すれば軽減できる。 発熱時、下痢など脱水のおそれがあるときは休薬する。ヨード造影剤使用の際は2日前から投与を中止する。
※この「ビグアナイド系(BG薬)」の解説は、「経口血糖降下薬」の解説の一部です。
「ビグアナイド系(BG薬)」を含む「経口血糖降下薬」の記事については、「経口血糖降下薬」の概要を参照ください。
- ビグアナイド系のページへのリンク