ヒ酸とは? わかりやすく解説

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ヒ酸

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/19 05:10 UTC 版)

ヒ酸
識別情報
CAS登録番号 7778-39-4 
RTECS番号 CG0700000
特性
化学式 AsO(OH)3
モル質量 141.943 g mol-1
外観 無色結晶
密度 2.5 g cm-3, 固体
融点

35.5 ℃(1/2水和物)

沸点

160 ℃(脱水)

への溶解度 96.2g / 100g(20 ℃)
酸解離定数 pKa 2.24, 6.96, 11.50
熱化学
標準生成熱 ΔfHo -906.3 kJmol-1[1]
危険性
EU分類 Carc. Cat. 1

非常に有毒( T+
環境にとって危険( N

NFPA 704
0
4
0
Rフレーズ R23/25, R45, R50/53
Sフレーズ S53, S45, S60, S61
引火点 不燃性
半数致死量 LD50 6 mg/kg (rabbit, oral)
関連する物質
関連するオキソ酸 リン酸
ゲルマニウム酸
セレン酸
過臭素酸
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

ヒ酸(砒酸、ヒさん、英語: arsenic acid)は、化学式 H3AsO4 で示される無色結晶で、ヒ素オキソ酸の一種である。オルトヒ酸(オルトヒさん、orthoarsenic acid)とも呼ばれるが、他方メタヒ酸(メタヒさん、metaarsenic acid, HAsO3)に相当する分子は安定には存在しない。

0.5水和物が無色結晶として単離されており、これは吸湿性で水に極めて溶解しやすく、ヒ素原子の酸化数は+V(+5)と最高酸化状態であり、3価のとしてはたらくなどリン酸との類似点が多い。

毒性は亜ヒ酸には劣るものの極めて強く、LD50ウサギ)は体重1kg当たり6mgであり[2]、日本ではヒ酸およびヒ酸塩は医薬用外毒物に指定されている。

製法

単体ヒ素または三酸化二ヒ素を濃硝酸により酸化し、溶液を濃縮すると29.5℃以下で0.5水和物の細かい板状結晶が析出する[3]。29.5℃以上ならば三ヒ酸(

ヒ酸イオン

ヒ酸の第一段階電離により、ヒ酸二水素イオン(ひさんにすいそいおん、dihydrogenarsenate(1-), H2AsO4-)、第二段階解離によりヒ酸水素イオン(ひさんすいそいおん、hydrogenarsenate(2-), HAsO42-)、第三段階解離によりヒ酸イオン(ひさんいおん、arsenate, AsO43-)を生成し、それぞれヒ酸二水素塩、ヒ酸水素塩、ヒ酸塩の結晶中に存在する。

ヒ酸イオンは正四面体型構造でありリン酸イオンに類似し、As-O結合距離は169pmである。

酸性水溶液中ではやや酸化作用を示す。

ヒ酸塩

ヒ酸塩(ひさんえん、英語: arsenate)には、正塩および水素塩/酸性塩(ヒ酸水素塩、hydrogenarsenate、 ヒ酸二水素塩、dihydrogenarsenate)が存在し、ヒ酸水溶液に計算量の水酸化物を溶解し濃縮すると析出し、また可溶性の金属塩水溶液にヒ酸ナトリウム水溶液またはヒ酸水素ナトリウム水溶液を加えると不溶性のヒ酸塩であれば沈殿する。

二ヒ酸(H4As2O7)は二リン酸とは異なり加熱脱水では得られず、ヒ酸水素塩を加熱脱水することにより塩として得られる。

コバルト華

鉱物学において、ヒ酸塩からなる鉱物ヒ酸塩鉱物(ひさんえんこうぶつ、: arsenate mineral)という。ヒ化鉱物あるいはヒ素を含む硫化鉱物などの酸化により生成し、また、リン酸塩鉱物のリン酸イオンをヒ酸イオンに置き換えたものも存在し、以下のようなものが知られる。

  • アダム石(adamite、Zn2(AsO4)(OH)
  • オリーブ銅鉱(olivenite、Cu2(AsO4)(OH)
  • コバルト華(erythrite、Co3(AsO4)2・8H2O
  • ニッケル華(annaberigite、Ni3(AsO4)2・8H2O
  • スコロド石(scorodite、Fe(AsO4)・2H2O
  • ミメット鉱(mimetite、Pb5(AsO4)3Cl

脚注

  1. ^ a b c D.D. Wagman, W.H. Evans, V.B. Parker, R.H. Schumm, I. Halow, S.M. Bailey, K.L. Churney, R.I. Nuttal, K.L. Churney and R.I. Nuttal, The NBS tables of chemical thermodynamics properties, J. Phys. Chem. Ref. Data 11 Suppl. 2 (1982)
  2. ^ Merck Index 13th
  3. ^ a b c 化学大辞典編集委員会『化学大辞典』共立出版、1993年
  4. ^ FA コットン, G. ウィルキンソン著, 中原 勝儼訳『コットン・ウィルキンソン無機化学』培風館、1987年,原書:F. ALBERT COTTON and GEOFFREY WILKINSON, Cotton and Wilkinson ADVANCED INORGANIC CHEMISTRY A COMPREHENSIVE TEXT Fourth Edition, INTERSCIENCE, 1980.
  5. ^ 田中元治 『基礎化学選書8 酸と塩基』 裳華房、1971年

関連項目

外部リンク





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