ヒトの直立二足歩行
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/08 02:26 UTC 版)
ヒトの場合、胴体の真下に下肢が付き、股関節が体の中心軸に近く、左右の揺動が少なく済むような構造になっている。胴体が垂直に立っているため、胴体の重心位置は股関節よりかなり上に位置することになり、偏心モーメントを発生することになる。ヒトの場合、胴体の重心位置はみぞおちのやや上、全身の重心位置はへそのやや下になる。そのため、ヒトが歩行を始めると、その反動が胴体にモーメント力(回転力)として伝わることになる。このモーメント力を床面まで伝えて打ち消す必要があるので、太い脚と大きな足裏、それを動かすための余分なエネルギーが必要となる。自然界で直立二足歩行があまり見られないのは、エネルギー効率が悪いためであると考えられている。 二足歩行には幾つか種類があり、その違いを歩様(歩容、歩法と書く場合もある)という。二足歩行の歩様にはウォーク(常足、なみあし)、トロット(速歩、はやあし)、ギャロップなどがある。単に歩行と言った場合は、トロットのことと考えて差し支えない。トロットとは交互に軸足が切り替わり、常にどちらかの足が地面に付いている、跳躍期のない歩き方のことを言う。軸足は瞬間的に入れ替わり、両方に体重がかかっている期間はないか無視できるほど短いものとされる。トロット歩行の場合、歩行という一見複雑な運動を、軸足の接地点を回転中心とした回転運動として捉えることができる。 歩行が回転運動だとすると、遠心力が発生するはずである。このときの遠心力 F {\displaystyle F} は下の式で表される。 v {\displaystyle v} は重心の移動速度(=歩行速度)、 r {\displaystyle r} は重心位置の高さ、 m {\displaystyle m} は質量である。 F = m v 2 r {\displaystyle F={\frac {mv^{2}}{r}}} Fを mg と置き換えると、次の式が導かれる。 g {\displaystyle g} は重力加速度である。 v = g r {\displaystyle v={\sqrt {gr}}} これは歩行の限界速度を表す式で、これより速い速度で歩行すると、遠心力により自然に脚が床面から離れ、走行に移行することを意味している。人間の重心位置の高さを 1.2m とすると、歩行の限界速度は 12.3km/h となる。競歩の世界記録は 13.6km/h (50Km)。腰の捻りや足裏のストロークなどが加わるため、単純化したモデルから得られる数値よりは大きくなる。短距離では 16km/h ほどまで速度があがるが、これは腰を落として回転運動にならないように強引に体を水平に動かしているためで、疲労の度合いが激しい。 トロット歩行の場合、水平方向の運動量は理論的には次のステップへ100%伝達される。上下方向の運動量は床面との衝突により失われてしまうが、ヒトの場合、重心の位置エネルギーをアキレス腱が保存し、軸足交換時に体を蹴り上げて次のステップに伝えていると考えられている。 両方に体重のかかる期間のある歩様をウォークと言うが、両足が地面についていると重心の速度ベクトルの向きが一方向に拘束されてしまう。そのため、ステップごとに上下方向の運動量に加えて左右方向の運動量も失われる(重心の軌跡がジグザグになる)ので、エネルギーコストが著しく悪化する。それゆえ、あまり行われていない歩行と考えられている。 ヒトは両足が地面から離れる時間が存在する直立二足走行を行うこともできる。走行は歩行と比較して高速であり、捕食者からの逃走に向いているほか、手に武器を持ちながら二足走行を行うことで効率的な狩猟をも可能にした。反面、四足歩行に比べると腰や膝への負担が大きく、エネルギー効率も低い。
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ヒトの直立二足歩行
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/21 07:16 UTC 版)
「直立二足歩行」を参照 鳥類を見ると体幹と大腿部はほぼ水平で膝を屈曲させた姿勢で膝関節より遠位の節を大きく動かして歩行している。これに対してヒトの歩行では足の上に重心が常に乗っているわけではなく、股関節より遠位の節を大きく動かし、動的に安定して歩行している。
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