ヒトの皮膚呼吸
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/23 14:47 UTC 版)
1851年には、人間の皮膚が空気から酸素を取り込むことをゲルラッハが証明し、肺での呼吸も含めた呼吸全体への寄与はわずかであるが、空気中の酸素がヒトの皮膚に取り込まれることが、それ以降知られるようになった。70kgの運動選手では、肺のガス交換のために表面積を最大70m2必要とするが、体の表面(皮膚)は1.4m2しかなく、肺呼吸を皮膚呼吸で完全に置き換えることは不可能である。一方で、人間の31週未満で生まれた(早産の)新生児(赤子)では、安静時に5-6倍高い値が得られたことから総酸素量の13%を皮膚から得ていると推定されている。 ヒトにおける皮膚呼吸では、19世紀初頭からの研究の要約を1957年にまとめた論文があり、用語の定義として、「皮膚呼吸」とは皮膚自身のための(皮膚だけが必要とする)呼吸交換のみを指すべきだが、言葉の使用が広がるにつれ、皮膚表面を通した呼吸へと意味が広がっており、その論文でも後者の意味を採用している。皮膚表面を通過した酸素の量や、排出された二酸化炭素の量、また皮膚からの水分損失を測定するといった一連の研究が行われてきた。初期の研究では全呼吸中のx%以下が皮膚表面から行われたのように合算された曖昧な記載であったが、1930年代までに時代が進むと皮膚からの酸素吸収率は約1パーセント、二酸化炭素損失は約2.7パーセントと明確になっていった。1793年にも、温度の上昇によって皮膚からの二酸化炭素の排出が増加すると報告されたが、その後それは起こらないという議論も行われ、ほかの研究者がそれらのデータを図示すると滑らかな曲線を描いたため、後の複数の研究者はこれを「臨界温度」と呼んだ。 1990年代には、ドイツのマックス・プランク研究所の研究者らが酸素流量測定装置を開発し、皮膚の一部分を通過した酸素吸収量が測定できるようになった。それまでは総酸素供給量という形で計測されていたものが、装置の開発によって部分的に測定できるようになり、そのデータをもとに試算し、皮膚の表面から0.25-0.4mm(表皮と真皮の一部)の深さまでは、血液からの酸素供給はわずかで、ほぼ空気中から酸素が供給されているとされた。
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