バーチャルサイクリングの歴史
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/11/10 18:30 UTC 版)
「Zwift」の記事における「バーチャルサイクリングの歴史」の解説
屋内トレーニングにはいくつものメリットがある。例えば天候が悪いときに屋外でトレーニングするのは危険がつきまとうが、屋内では安全にトレーニングができる。怪我からのリハビリテーションにもインドアトレーニングが有効とされる。地形や交通、信号などの影響を受けないため、必要なトレーニング強度、時間に応じて正確な練習ができる。 器具を用いた屋内サイクリングは非常に長い歴史があり、原始的な屋内トレーニング器具は1880年代にすでに登場している。コンピューターや録画器具がなかった頃は、サイクリストにとって屋内トレーニングはきわめて退屈で、能力を維持するためにいやいや行うこととされていた。「壁をぼーっと見つめる」という言葉もこの頃から使われるようになった。この時代には音楽を聴くことが唯一の楽しみだった。 1980、1990年代になると、VHSなどの映像機器が登場し、ツール・ド・フランスなどの映像を見ながらトレーニングができるようになった。 トレーニングビデオが一般的になった頃には、すでにビデオゲーム形式のトレーニングソフトウェアが登場し始め、Exergaming (エクササイズとゲームを合わせた造語)と呼ばれた。最初のものは1980年に登場した Autodesk Highcycleとされる。建築設計企業のAutodeskが開発し、専用のトレーニング機器を必要とした。1982年には、ATARIが "puffer" というコードネームで、同社の8ビットコンピュータに接続して使用することを想定し、ペダルとハンドルの操作を行う専用の機器を開発していた。しかしアタリショックの影響でこのプロジェクトは中止となり、日の目を見ることはなかった。 1980年代には、電子制御で負荷を制御でき、ライダーの動力をワット単位で計測する個人用の屋内ローラー台が登場した。これ以前は、動力を計測するには非常に高価な研究室レベルの機材を必要としていた。RacerMateは1986年に、 Nintendo Entertainment System 向けに Computrainer というローラー台と、「Racermate Challenge」というゲームを発表した。Computrainer は、サイクリストが自分の自転車をローラー台にセットでき、負荷が自動で電子制御されるローラー台としては最初のものだった。負荷ユニットは、ゲーム画面に表示される仮想世界の地形に応じて負荷が変化する。画面には地形のほかに、ライダーの動力や心拍数、ケイデンスが表示された。Racermate ChallengeにComputrainerを二つ接続すると、二人のライダーが対戦することも可能であった。Computrainerはその後も開発が続けられ、2018年初頭に販売を終了した。 シンガポールの The Sufferfest社は、プロのレース映像と、インターバルトレーニングを組み合わせた映像トレーニングソフトウェアを開発した。 ブロードバンド接続が一般的になるにつれ、通信を用いて遠く離れた場所のサイクリストと共にトレーニングを行うソフトウェアも登場するようになった。2005年にアメリカの Netathlon 社が発表したソフトウェアでは、仮想世界の地形に応じてローラー台の負荷が変わったり、通信機能により仮想世界内でグループライドを行う機能もあった。Netathlonのグラフィックは当時の基準で見ても非常に原始的なもので、ゲームの動作にも不安定さが報告されていたが、Netathlon愛好家のコミュニティが形成され、月などの仮想現実コースでグループライドが行われていた。 オランダのローラー台製造業、Tacx社もこの分野の先駆者であり、Tacx Training Software というソフトウェアを同社のハイエンドローラー台のユーザー向けに提供していた。ネット接続で遠方のライダーと対戦する機能もあった。このソフトウェアでは欧州のさまざまな地形が再現されており完成度は高かったが、Tacxはこのプログラムをローラー台の価格とは別の有料サービスとしたため、充分なユーザー数を集めることができなかった。
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