デネの人々
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「ベーオウルフの登場人物の一覧」の記事における「デネの人々」の解説
アッシュヘレ(Æschere) フロースガール王の相談役であり、王と肩を並べて戦った経験を持つ戦士でもある。他人に手を差し伸べることを惜しまない貴族の理想像として描かれるが、グレンデルの復讐のためにその母親がヘオロットを襲撃し逃走する際に連れ去られ、彼女の住処で食い殺された(殺された後に遺体が持ち去られたとする訳もある)。フロースガールは自身が特に目にかけていたアッシュヘレが殺されたことを深く嘆き悲しむ。後にグレンデルの母親の住処の傍でアッシュヘレの頭部が発見され、彼の死は確定的となる。その年齢について、1405行では「若い従士」(mago-þeġna)とするが、2122行では「老顧問」(frōdan fyrn-witan)とする。(1323-1329行、1402-行、1417-行、2122-行) ウェアルフセーオウ(Wealhþeow) フロースガールの妻。夫との間に王子フレースリーチとフロースムンド、王女フレーアワルを儲ける。ベーオウルフは彼女を「民族間の平和の保証たる方」(friðu-sibb folca)(2017行)と呼んでおり、フロースガールとの婚姻は政略結婚の性質を備えていた事が窺える(en:peace-weaver)。あるいは「ウェアルフセーオウ」の名は「外国の奴隷」とも解釈できる人工的な印象の名であり、略奪婚であったのかもしれない。その出身について、写本ではヘルミング一門の出(620行)とされており、異説もあるもののウュルヴィング族の支配者層の血筋と考えられる。フロースガールとの関係は良好であったが、ベーオウルフがグレンデルからヘオロットを解放したのち、この館が焼け落ちた頃には両者の関係は冷えていたようだ。(612-641行、664行、1162-1232行、1215行、2172-2175行) ウルフガール(Wulfgar) ウェンデル人の長。フロースガール王の廷臣でもあり、その博識ぶりで名高い。 ウンフェルス(Unferð) フロースガールの廷臣。写本においては彼の名は一貫してHunferðと記述されているが、Unferðと校訂するのが主流である。 エッジウェラ(Ecgwela) 詳細不明のデネの王。ヘレモードの先祖。(1710行) エッジラーフ(Ecglaf) ウンフェルスの父親。(499行、590行、980行、1465行、1808行) オネラの妻 写本62行目にはデネ王家所縁の女性がスウェーオンのオネラへと嫁いだと思われる記述があるが、彼女の名は欠落している。フローズルフの母親であるユルゼ(Yrs(e))とするのが多数派であるが、ウルスラとする者もある。 シュルド(Scyld) シェーフの子シュルド。ベーオウの父親。幼子の頃、シュルドは多くの捧げ物と共にただ一人船に乗せて流され、デネの地に漂着する。彼を発見したデネの人々に守り立てられたシュルドはこの地で覇を称え、後の王家の祖となる。彼が崩御した際には、遺言通り彼の遺体と財宝を載せた船が海へと流された(舟葬)。(4-26行) 『アングロサクソン年代記』にはシュルドの系譜が残されている。これによればシェーフはノアの子であり、シュルドはシェーフの七代目の子孫でベーオウという息子を持った。一方、エゼルウェルド(英語版)の『年代記』 (Chronicorum libri quatuor) やマームズベリのウィリアムの『歴代イングランド王の事績(英語版)』はシュルドの親をシェーフとしている点では『ベーオウルフ』と同様であるが、漂着した過去を持つ王をシュルドではなくシェーフとしている点で異なる。 ハールガ(Halga) フロースガールの弟でありフローズルフの父。『ベーオウルフ』内での言及は少ないが、北欧の伝承ではフロースガールよりも活躍しており、『エッダ』の『フンディングを殺せしヘルギの歌』ではデネ族の代表的人物として扱われている。 フレーアワル(Freawaru) フロースガール王とウェアルフセーオウ女王の娘。ヘアゾベアルド(英語版)人の王インゲルドの妻。 フレースリーチ(Hreðric) フロースガールとウェアルフセーオウの長男。フロースムンドとフレーアワルの兄。フローズルフは従兄弟にあたる。『ベーオウルフ』ではフレースリーチは名が触れられるだけであり特別な役割を果たすことはない。(1189行、1836行) 『デンマーク人の事績』によればフレースリーチに相当するレーリクスはフローズルフに相当するロルウォに殺されている。 フロースガール(Hroðgar) デネの王でありウェアルフセーオウの夫。 『ロルフ・クラキのサガ』や『デンマーク人の事績』ではフローアルル、ローエという名で呼ばれている。 フロースムンド(Hroðmund) フロースガールとウェアルフセーオウの次男。フレースリーチの弟でありフレーアワルの兄。『ベーオウルフ』ではフロースムンドは名が触れられるだけであり特別な役割を果たすことはない。(1189行) フローズルフ フロースガールの甥。北欧の伝承ではロルフ・クラキ、ロルウォといった名で呼ばれている。 ヘアルフデネ(Healfdene) フロースガールの父親であり先の王。 『スキョルドゥンガサガ』のアルングリーム・ヨーンスソン(英語版)による要約 Rerum Danicarum Fragmenta によるとヘアルフデネの母親はスウェーオン王の娘であり、「半デネ」というヘアルフデネの名の由来を説明することが可能である。 ヘアロウェアルド(Heoroweard) ヘオロガールの息子でありフロースガールの甥にあたる。北欧伝承におけるヒョルワルド。父であるデネの王ヘオロガールが崩御した際、ヘアロウェアルドは僅か10歳であった。従って王位は王弟であるフロースガールが継承することとなった。また、フロースガールはグレンデルとその母親退治の褒賞としてベーオウルフにヘオロガールの遺品である鎧を下賜してしまった。(2155-2162行) 叙事詩『ベーオウルフ』においては彼への言及は少ないが、ヘアロウェアルドとその従兄弟であるフローズルフの戦いは有名であり、当時の『ベーオウルフ』の聴衆にとってはヘアロウェアルドの名を聞いただけで後のフローズルフ殺しが連想されるほどであったとする説もある。『ロルフ・クラキのサガ(英語版)』では、フローズルフに相当するロルフ・クラキはヒョルワルドに殺されるが、ヒョルワルドもまたロルフの部下であるウィツゴに騙し討ちされる。 ヘオロガール(Heorogar) フロースガール王の兄であり、先王でもあった。ヘアロウェアルドの父。(61行、467行、2158行) ヘレモード(Heremod) 初期のデーン人の王。ヘレモードが追放されて生じた王の不在期間にシュルドが流れ着いたのだと考えられる。 『ベーオウルフ』では彼とシュルドの間には血統はないが、マームズベリのウィリアムの『歴代イングランド王の事績』ではシュルドの祖父、『アングロサクソン年代記』や『エッダ』の序詞、『系譜』(Langfeðgatal)ではシュルドの父親とされる。『デンマーク人の事績』に登場するスキョルドゥスの父親である暴君ローテルスは『ベーオウルフ』におけるヘレモードの描写と類似点が多い。Scondia illustrataにおいてもディン人の王ローテルスが暴政のあまり追放されている。。 ベーオウ(Beow) シュルドの子でありデーン人の初期の王。写本には彼の名はベーオウルフと記されており、叙事詩の主人公と同名の別人物ということになるが、史実と照らし合わせた結果ベーオウの誤記であるとする説が主流である。 ユルメンラーフ(Yrmenlaf) アッシュヘレの弟。(1324行)
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