デジタル著作物対応
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/07/04 13:47 UTC 版)
「著作権法の歴史 (アメリカ合衆国)」の記事における「デジタル著作物対応」の解説
1990年代からのインターネット普及に伴い、著作物がデジタル化されてインターネット上で流通するようになった。このような社会変化を受け、国際的にはWIPO著作権条約が1996年に採択された。これに呼応する形で、米国内では1998年にデジタルミレニアム著作権法 (DMCA) を成立させ、デジタル著作物に関する著作権侵害の罰則と、インターネット関連事業者の免責条件が明文化された。しかし、著作権侵害の有無が不明瞭でも「とりあえず削除」のインセンティブをインターネット事業者に与えうるとして、DMCAへの批判の声は国内外から寄せられている。 「著作権法 (アメリカ合衆国)#インターネット関連事業者への免責」も参照 DMCA成立以降も、デジタル著作物に関連する法案は連邦議会に多数提出されているが、大幅な改正は廃案が続いている。2010年に提案され、上院のみ通過した後に廃案になったオンラインにおける権利侵害および偽造防止法(英語版) (略称: COICA) や、COICAの修正案として位置づけられていたが2011年に廃案となったPROTECT IP法案 (略称: PIPA)、同2011年に廃案となったオンライン海賊行為防止法案 (略称: SOPA) と商業ストリーミング重犯罪取締法案(英語版)、SOPAの対案として同2011年に提出されたが廃案となったデジタル取引オンライン保護取締法案(英語版) (略称: OPEN Act) などが例として挙げられる。 DMCAに関連する小規模な改正法としては、SIMロック解除合法化法(英語版)(The Unlocking Consumer Choice and Wireless Competition Act) が2014年に可決・制定されている。携帯電話事業者の許可なく携帯電話のSIMロックを解除すると、DMCAが定める技術的保護の回避禁止 (端末に内蔵されるソフトウエアの変更禁止) に抵触してしまう。これを法的に回避するため、DMCAの免除措置が行われてきたが、免除更新が切れた2013年からは違法となっていた。2014年のSIMロック解除合法化法成立によって、再び暫定的に合法化している。 その他の分野を見ると、デジタル配信の音楽ダウンロードや電子書籍など、デジタル著作物の社会普及を勘案し、米国著作権法第109条で定めた消尽論 (著作物複製の所有者が自由に売却できる権利) をこれらデジタル著作物に拡大して適用すべきか検討段階にある。特にデジタル・レンタルの分野では消尽論の適用による利便性の向上が見込まれるものの、ライセンス許諾の観点で時期尚早の政府介入が逆に市場の発展を歪めるとの意見が米国商務省のインターネット政策タスクフォースよりあがっている。 また、著作権者と著作物の利用者の仲介役は著作権管理団体の半ば独壇場であったが、インターネットの普及によって構図が変わった。著作権者側の窓口が著作権管理団体なのに対し、利用者側の窓口をインターネットサービス事業者や携帯電話などの通信事業者が務める構図である。音楽業界を例にとると、Amazon MusicやSpotifyなどが著作権利用料込みで一般ユーザに課金し、それを一括して著作権管理団体に支払うマネーフローである。これらインターネットサービス事業者の市場における存在感が増すにつれ、著作権者や著作権管理団体との利害衝突も発生している。これに関しては米国よりも欧州連合 (EU) が先行しており、2019年4月可決・同年6月施行の「デジタル単一市場における著作権に関する指令」に基づき、EU加盟国は国内法を整備する義務を負い、権利者サイドとインターネットサービス事業者サイドの利害調整と単一化を目指している。
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