デジタル腕時計
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/25 04:41 UTC 版)
数字点滅表示式の、いわゆるデジタル式の腕時計として、最初に市販されたのは1970年、アメリカのハミルトンの「パルサー」であった。しかしパルサーは赤色の発光ダイオード (LED) を表示器に使用しており断線しやすく修理が困難、また時刻合わせは専用の磁石を裏面に近づけて行うなどの特殊な構造で、かえって実用性に問題があり若干が出現した同種のフォロワーともども数年のうちに市場から消えた。 実用的なデジタル腕時計の実現はその後の液晶表示器 (LCD) の導入以後で、1972年-73年にかけ、グリュエン、セイコーなどからLCD腕時計が出現した(当初からクォーツ式として精度を確保していた)。当初は物珍しさもあり極めて高価な価格設定の製品とされた(廉価な量産品の時計ではコストの多くを占める、キャリバー以外の部分を高級仕様とした)。しかし、ボタンスイッチの電気接点以外に可動部品皆無な構造で大量生産に適する、という電子機器の常で短期間のうちに低価格化が促進され、一般に針式より廉価な設定の商品となっている。 子供用やノベルティなどの目的で製造される時計は、それまでの針式・機械式時計の場合、トゥースクラブ脱進機(スイスレバー脱進機)搭載の通常品に比べて低コストだが精度や耐久性で甚だしく劣るピンレバー式脱進機の安物が主流であったが、液晶式デジタル腕時計はその種のローエンド市場を一新し、改めて開拓する製品に位置付けられた。 その後アラーム機能、ストップウォッチ機能など、腕時計の高機能化と低価格化が同時に進み、かつて高級品であった腕時計は、子供のこづかいでも買えるような身近な存在となって消耗品化した。それ以前のような定期的な分解掃除が不要となり、在来型機械式時計を取り扱う技術者(時計師)を擁する時計店が日本全国で3万軒、廃業の縁に立たされたともいう。
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