ダイハツ時代
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/12 14:11 UTC 版)
「イノチェンティ・ミニ」の記事における「ダイハツ時代」の解説
1982年4月、エンジンがダイハツ工業製に変更され、同時にミニ由来のラバーサスペンションがより一般的で快適な自社開発の前輪ストラット式・後輪リーフサスという組み合わせに変更された。このモデルは新型エンジン搭載車であることを区別するため「イノチェンティ トレ・チンドリ」(Innocenti Tre Cilindri、『イノチェンティ3気筒』の意)及び「トレ」(Tre、イタリア語で『3』)に改称された。新エンジンとサスペンションの採用により、車重は約55kg増加した。機構面で大幅なアップデートがあった反面、外観上の変更点はバッジとチンスポイラーに留まり、前モデルとの区別はほとんどできなかった。 1984年には「ミニトレ」(Minitre、"Mini 3"と表記されることもあり)と改称された。部品の大半がダイハツ・シャレードの流用品となり、それまでBLの現地関連会社で運営されていたヨーロッパ各国への輸出は中止されるか全般的に減少していった。生産開始直後の1〜2年はフランス、ベルギー、スイスへ限定的に輸出され、1983年にドイツのダイハツ車輸入ディーラーであるヴァルター・ハーゲン(Walter Hagen )が、数年間途絶えていたドイツでのイノチェンティ車の販売を引き受けた。 なお、レイランド製エンジンを搭載した旧型モデルの在庫販売も継続されていた。新モデルが登場したにもかかわらず、生産台数は1981年の2万3,187台から翌年の2万1,646台、1983年の1万3.688台と減少の一途を辿ったが、1984年以降は全体的な信頼性が向上したこともあり販売数は増加した。 エンジンはシングルキャブレター付で最大出力52PSを発生するガソリンエンジンを搭載し、S、SL、SEという3つのグレードが用意されていた。トランスミッションは4気筒エンジン車に限り4速MTが使用されていたが、標準では5速MTが組み合わせられ、後に「マティック」(Matic)と呼ばれる2速セミATも追加された。これはトルコンと従来式のフロアシフトによる2種類のギア比を持つ遊星歯車機構を備えていた。 ダイハツ製の動力系統はBL製と比べてかなり高価であったが、ダイハツ製エンジン搭載車はBL製エンジン搭載車の場合と比べて保証期間内の修理が70%も減少したという報告がある。しかしその高品質ゆえに、イノチェンティのサービス網が余剰人員を抱えることになってしまうという弊害も生じた。もっとも、このサービス人員の過剰は生産数の漸減(1970年代末の4万台から1980年代半ばにかけての減少)に起因していた可能性もあり、主要な競合他社であるフィアットよりも高級で趣味性の高い車を提供することで状況の改善を図っていた。 生産は1993年まで続けられた。このモデルでは最高出力37 PS (27 kW)を発生する1.0 Lのディーゼルエンジンも選択することができ、外装も内装も通常のミニトレと同一に見えた。導入当初、このエンジンは世界最小の乗用車用ディーゼルエンジンというだけでなく、量産されている自然吸気のディーゼルエンジンの中でも最高出力を誇るものであったため、走りは驚くほどに活発なものであったという。ディーゼルエンジンを導入したこともあり、イノチェンティの生産台数は損益分岐点である年産約2万台を超えた。ディーゼルモデルの売れ行きは、当初の予想であった全生産数の20%という数値を大きく上回る30%を占めていたが、ガソリンモデルの販売を損なうことはほぼなかった。 1986年、トリノで全長を延ばした990が発表された。このモデルはホイールベースを16 cm (6 in)延長し、自然吸気のガソリンエンジンと1.0 Lのディーゼルエンジンから選択できた。後部座席も拡大されたことで、空力改善に役立つなだらかな傾斜の前面ガラスも装備されるようになった。バランスの取れたデザインにより、ドア窓のサッシが取り去られている点やドアミラーの位置が前進している点を見極められなければ、ロングホイールベース版を見分けることは困難であった。荷室空間も280 L (9.9 cu ft)から295 L (10.4 cu ft)に拡大された。1982年、コーチビルダーのEmboがミニ・トラベラーの長いシャーシを利用して990のコンセプトカーを製作した。ターボ版を除いてショートホイールベースの1 Lモデルは1987年7月で生産中止となった。990はSLと充実装備のSEが選択できた。 後期生産型、ロングホイールベースの「スモール 990 セリエ・スペチアーレ」 イノチェンティ・スモール500
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