シェンゲン査証
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/23 06:50 UTC 版)
シェンゲン圏内における、就労または自営活動を伴わない短期滞在のための査証の要件は欧州連合の規則で定められている。短期滞在に査証を要する国民のリスト(附属書1リスト)と査証が免除される国民のリスト(附属書2リスト)では対象となる第三国の国籍を列挙しており、所持するパスポートや渡航文書については列挙していない(ただし香港特別行政区とマカオ特別行政区発行のパスポート、難民旅行証明書については言及がある)。就労または自営活動を予定している第三国の国民については、シェンゲン査証の免除の対象になっていても加盟国から査証を受けることになるが、通常の出張旅行は就労活動とはみなされないことが一般的である。また加盟国は自国の領域に入域・滞在することに関して、追加的に査証の発行を必要とすることができ、あるいは外交、公用、そのほかの特別なパスポートを所持している人物に対してはさらに免除することができる。 シェンゲン統一査証は2012年現在ステッカーからカードの形式に移行しており、シェンゲン圏に入域する時点で入域の要件を満たしていれば、加盟国からパスポート、渡航文書や、そのほかの越境を認める内容の有効な文書に付与される。 シェンゲン査証には以下のタイプがある。なお2010年4月5日に査証に関する新規則が施行され、タイプ B とタイプ D+C の新規発給は停止されている。 タイプ A - 空港におけるトランジット用の査証。一部の国籍の渡航者は、国際線の2つの路線を中継または乗り換えをする間に空港の国際線トランジットエリアを通行するために受給が必要となっている。 タイプ C - 短期滞在用の査証。移住以外の理由で発行される。所持者は最初の入域の日から半年間で、滞在日数が90日を越えない限りで1回以上の滞在が認められる。 タイプ D - 加盟国独自の査証。カード形式の統一様式を使用するものの、加盟国それぞれの法令で定める条件によって発行されるものである。この査証でもタイプ C 同様に、所持者は入国の日から半年間で滞在日数が90日を越えない限りで発行国およびほかのシェンゲン圏の滞在が認められる。2010年4月5日以前は、ほかのシェンゲン協定加盟国に渡航するには、目的国に到着してから居住証明書を取得しているか、あるいは査証タイプ C+D を受給していなければならなかった。 FTD および FRTD - ロシア本土とカリーニングラード州の間での移動において、シェンゲン圏を通過するさいに発行される特別な査証。FTD は道路、FRTD は鉄道用となっている。 シェンゲン査証を受給するには、渡航者は以下の手続きを経なければならない。 渡航者はまず、シェンゲン圏のどの国を主たる目的地とするかを定めなければならない。これによってシェンゲン査証の申請について管轄する国と、申請書の提出先となる大使館または領事館が決まる。主たる目的地を決めることができない場合、渡航者はシェンゲン圏に最初に入域する国の大使館または領事館で査証申請を提出する。また主たる目的地あるいは最初に入域するシェンゲン協定加盟国が渡航者の国内に在外公館や領事を設置していない場合、渡航者はその国内にある別のシェンゲン協定加盟国の大使館または領事館に問い合わせなければならない。 渡航者は管轄大使館または領事館にシェンゲン査証の申請書類を提出しなければならない。統一された書式に必要事項を記入し、有効なパスポートと、必要であればシェンゲン圏に滞在する目的や事情を示す内容の文書を添えて提出する。また渡航者は期間中の滞在費用や帰国経費などの経済的能力があるということを示さなければならない。また大使館・領事館のなかには、査証申請の理由を渡航者本人が口頭で説明することを求めることがある。 渡航者は緊急時の治療や健康上の理由による帰国にかかる出費を賄う、最低補償額が30,000ユーロである旅行保険に加入しなければならない。旅行保険加入証明書は原則として、査証申請手続きが完了するまでに発行を受けなければならない。 欧州経済領域参加国の市民の家族については上記の手続きとは異なる。就労についての事情や滞在中の経済的能力について証明する必要はない。また査証の発行にあたって費用がかからない。
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