エンジントラブル発生
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/10 23:52 UTC 版)
「パンアメリカン航空006便不時着水事故」の記事における「エンジントラブル発生」の解説
当時パンアメリカン航空006便は、アメリカ合衆国ペンシルベニア州フィラデルフィアを出発しヨーロッパ、アジア、太平洋の各地を経由したのちカリフォルニア州サンフランシスコに帰着する世界一周便として、定期的に運航されていた。事故機はサンフランシスコへの最後の区間を飛行するべく、1956年10月16日午後8時26分(現地時間)、ハワイのホノルル国際空港を離陸した。当日は機体記号N90943、シップネーム "Clipper Sovereign Of The Skies" で運航されており、運航乗務員4名と客室乗務員3名のほか、乗客24名が搭乗、予定ではおよそ9時間後にサンフランシスコに到着するはずであった。 006便は最初13,000フィートに上昇した後、しばらくはこの高度で巡航していた。離陸から約4時間半が経った翌午前1時02分、当初の計画通り21,000フィートへの上昇を申請。管制はこれを許可し、006便は順調に上昇した。しかし上昇完了直後の午前1時19分、突如第一エンジンが暴走し過回転を始めた。 エンジンが過回転となるとプロペラが壁のように立ちはだかって大きな空気抵抗を生じ、速度・高度が低下し、燃料消費が増える悪循環に陥る。また最悪の場合にはプロペラが強度の限界を超えて破断し、異常振動によるエンジンの崩壊から空中分解に至り、墜落する可能性がある。 操縦していた航空機関士は制御を試みたがうまくいかなかった。プロペラをフェザリングする(ピッチを最大にして抗力を最低限に保ち、速度低下を抑える)こともできず、速度が低下し続けたため、機長はやむを得ず第一エンジンへの潤滑油の供給を絶って強制停止を図る決断を下した。 結果としてピストンは焼きつき、第一エンジンを停止させることはできたものの、プロペラがウインドミル(風車状態)のままであり、抗力が増大して燃料の消費が激しくなった。巡航速度は維持できず、150ノット (280km/h) 以下にまで減速、毎分1,000フィート (5.1m/s) での降下を余儀なくされた。 少しでも降下を遅らせるため、残り三基のエンジンを稼働していたところ、今度は第四エンジンが不調となり、フルスロットルでも十分な動力を供給できなくなった。午前2時45分にはバックファイアを起こしたため、乗員はやむを得ず第四エンジンを停止、プロペラをフェザリングした。
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