エル・ファシルを巡る戦い
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「銀河英雄伝説の戦役」の記事における「エル・ファシルを巡る戦い」の解説
宇宙暦788年/帝国暦479年5月~9月。同盟外縁部のエル・ファシル星系において発生した帝国軍小艦隊と同盟守備部隊との戦いと、その後に生じた一連の出来事を指す。なお、OVA版ではそれまで断片的にのみ語られていた本エピソードは、外伝「螺旋迷宮」第1話「エル・ファシルの英雄」で話としてまとめられた。 当初は単なる小競り合いと思われていたが、守備部隊の司令官であるアーサー・リンチ少将が指揮と運用を誤って帝国軍に背後から急襲される事態となった(OVA版では撤退したと見せかけた帝国軍が、艦隊を反転させた直後のリンチ艦隊に後背から急襲した)。リンチはエル・ファシルへの撤退を命じたが、艦列のたて直しを怠ったため壊走と化し、約半数の艦艇が撃沈もしくは投降した。惑星エル・ファシルには艦隊約200隻/兵力50,000人が逃げ込んだが、帝国軍はエル・ファシルを占拠しようと増援を繰り出し、失陥は決定的と見られた。 帝国の支配に怯えるエル・ファシル在住の民間人は脱出と保護を軍に求めてきたが、それを処理出来ないリンチは、警備艦隊幕僚の中で一番暇そうなヤン・ウェンリー中尉に対処を命じた(OVA版では手の空いている者に対応させろと命じ、命じられた士官が周囲を見回して、手持ち無沙汰のヤンに目を止めたという形になっている)。ヤンは脱出計画立案に着手するが、その年齢と階級、そして後にも度々ヤンの個性として登場する「外見の頼りなさ」から、民間人の代表者達に担当官としての技量を不安視されながらも艦船の手配を初め必要な準備は整えた。この時、当時14歳だったフレデリカにサンドイッチとコーヒーの差し入れを受けたが、ヤン自身はハイネセンに戻った際には既に彼女の事を失念しており、フレデリカが副官としてヤンの元に配属され、再会した時全く覚えていなかった(藤崎竜版コミックでは、第6次イゼルローン攻略戦で共に戦線に赴いたグリーンヒルから娘(フレデリカ)の事を直々に明かされており、その際にヤンはフレデリカのためのサインを求められた)。 その後、提出した脱出計画書に見向きもしないリンチの反応から司令官の思惑を察知したヤンは、密かに別の計画を立て始めた。やがてリンチと一部幕僚が民間人を見捨てて脱出した。これにつきリンチ本人は後に救援を呼んでくるために先発しただけだと主張したが、事前に告知していないなど矛盾が多いため、誰も信じていない。 だがこの事を予測していたヤンはかねてより立案しておいた計画を実施し、混乱する民間人をまとめ、リンチ達が帝国軍に追跡・拿捕される間隙を突いて別の方角から脱出する。敢えて帝国軍のレーダーに捕捉させ、隕石群と錯誤させて脱出に成功した(原作の「黎明篇」ではリンチ脱出後まもなく民間人の脱出計画を開始したが、OVAでは時間が経って脱出計画を開始したような描写になっている)。 この功績により、ヤンは二階級特進し少佐となった。ただし、不文律により生者に二階級特進を与えることが妨げられたため、6月12日午前9時に大尉、午後1時に少佐に昇進という異例の措置がとられた(螺旋迷宮(原作、OVA共に)では同年9月19日に中尉から大尉、さらにその16時30分に少佐に昇進)。また、「エル・ファシルの英雄」として同盟全土に名前が知れ渡ることになった。しかし、この異例の昇進の背景には、ヤンの英雄ぶりを演出する事によってエル・ファシルにおける軍部の失態から民衆の目を逸らすという政治的な思惑もあった。 なお、藤崎版では当時貴族幼年学校の上級生であったラインハルトはキルヒアイスからエル・ファシルの件について教えられたことで、ヤンの存在を初めて知る展開となっている。また、藤崎版・ノイエ版では脱出船団を帝国軍のレーダーにあえて捕捉させて隕石群であると錯誤させる点は省かれ、シンプルに民間人を見捨てて逃亡を図るリンチと一部幕僚が先んじて脱出したのを囮として利用してヤン達が脱出に成功するという流れになっている。
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