イルカ連続死問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/07 01:20 UTC 版)
「上越市立水族博物館」の記事における「イルカ連続死問題」の解説
「うみがたり」では、グランドオープン直後にバンドウイルカ「サシャ」が急死して以降、「アルク」、シロイルカ「リーヤ」、「ソーリャ」と、オープンから2年余りで搬入した鯨類6頭のうち4頭が死亡し、シロイルカについては全滅という事態となった。各個体の死亡時期と死亡原因は以下の通りである。並びは死亡時期の順。 バンドウイルカ「サシャ」死亡時期:2018年7月13日 死亡原因:感染性肺炎に起因する敗血症性ショック バンドウイルカ「アルク」死亡時期:2019年3月10日 死亡原因:尿細管間質性腎炎と壊死性膵炎に起因する心筋梗塞および循環性ショック シロイルカ「リーヤ」死亡時期:2020年5月20日 死亡原因:腎不全による尿毒症 シロイルカ「ソーリャ」死亡時期:2020年7月3日 死亡原因:肝臓ガス壊疽に起因する循環性ショック 上越市はこれを受けて、専門家による第三者検証委員会の設置を決定。検証は飼育、建築、水質の3つの観点から行うとし、それぞれの専門家から合わせて5名を選出し組織された。会合は2020年8月7日、11月29日、2021年1月23日の3回行われ、2月10日に報告書が公表された。 報告書では、ストレスによって各個体にそれぞれ内在していた要因が顕在化し、死に至ったと結論された。 飼育の面では、飼育員による各個体の取り扱いや個体間の関係は死とは関係ないとされた。横浜と上越の気候の差に加えて、水温を一定に保っていたことによって季節に対する体作りが不十分であったり、低気温や高気温の影響が相対的に大きくなる状況で、寒暖差の大きい上越の気候に晒されたことがストレスになったとしている。また、八景島から上越への移送時に一時的に給餌を止める「餌止め」が行われたことも各個体に悪影響を及ぼした可能性が指摘された。また、最後に死亡した「ソーリャ」については、同居していた「リーヤ」の死亡もストレス要因として考えられるとした(単独飼育を回避するために八景島に移送することも検討されたが、移動自体が強いストレス原因となりうるため取りやめられ、ゴマフアザラシとの同居や飼育員とのふれあい時間の増加といった処置がとられた)。プールの大きさは海外各国の基準と比較して狭いものの、各個体の行動からストレスを与えたとはいえないと判断された。 ただし、搬入後に各個体の腎臓の数値が一斉に悪化した時期があり、餌となる魚に含まれる成分の管理などに課題が残るとした。また、搬入後の血液検査による白血球数の変動は慢性的なストレスの可能性を示唆するものであったが、計測環境の差異などから(結果として)見過ごした点について、他の方法を用いて値の補正を試みるべきだったとした。 建築の面では、最大の特徴である野外に開放したプールの構造が気候の影響を拡大した可能性が指摘された。プールは海に向かって開けているため、冬の強風が直接吹き込み個体に悪影響を及ぼしたと考えられた。また開放された天井からの日光や降雪の影響もあるとされた。さらに、プールに隣接して設置されている浄水・循環装置の振動が、特に鯨類のコミュニケーションに用いられるとされる高周波領域で強く水中に伝搬していることが確認され、その影響を受けた可能性も指摘している。 水質の面では、飼育水質が死亡原因に影響したとは考えられないとした。 以上の点から、検証委員会は市に対して、上越の気候に沿った施設の改修や健康管理の強化を提言しており、市はそれに応じた即時の対策を実施し、また新年度予算による施設改修を検討している。
※この「イルカ連続死問題」の解説は、「上越市立水族博物館」の解説の一部です。
「イルカ連続死問題」を含む「上越市立水族博物館」の記事については、「上越市立水族博物館」の概要を参照ください。
- イルカ連続死問題のページへのリンク