アンチノーズダイブ機構
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/08 03:40 UTC 版)
「フロントサスペンション (オートバイ)」の記事における「アンチノーズダイブ機構」の解説
制動時のピッチングは、車体が前のめりになることからブレーキダイブ(brake dive)またはノーズダイブと呼ばれ、他の形式に比べるとテレスコピックフォークでは発生度合いが大きい傾向にある。こうした弱点を解消するためにノーズダイブを抑止する機構、すなわちアンチノーズダイブ機構がいくつか考案され一時は流行したが、言わばフォークの動きを阻害する機構であり、ダンパーの性能向上により現在は途絶えている。 ブレーキ油圧感応式 ブレーキ油圧によってプランジャを動作させ、制御バルブとは別に設けられたバルブの流路面積を可変させる。スズキがANDF (Anti Nose Dive Forks)として開発し、1983年以降のスズキ・GSX-Rシリーズやスズキ・RG250Γ、スズキ・カタナシリーズに採用した。カワサキはAVDSとして、1984年のカワサキ・GPZ900Rに搭載した。ヤマハはTCS (Travel Control System)として1984年のヤマハ・FZ400Rや、ヤマハ・RZV500Rに採用した。 ブレーキ反力感応式 制動でブレーキキャリパにかかる反力を直接利用して制御バルブとは別に設けられたバルブの流路面積を可変させる機構を作動させる。TRAC(Torque Reactive Anti-dive Control)としてホンダが開発し、1983年のホンダ・CB1100Fやホンダ・CB1000C、ホンダ・VFR750Fなどに採用した。 ブレーキスイッチ感応式 フロントブレーキレバーの操作を電気スイッチで検知してソレノイドバルブを作動させ、制御バルブとは別に設けられたバルブの流路面積を可変させる。ACT(Air Control Technology)としてマルゾッキが開発し、ビューエルが1988年のBuell RR 1200 Battletwinに初採用した。 内圧感応式 制動でフォークが速く大きく圧縮されるとフォークオイルの圧力が大きく上昇し、制御バルブとは別に設けられたバルブの流路を絞るピストンを作動させる。路面の凹凸でホイールが急激に沈み込んだ際にも作動するため、スズキが開発したPDF(Posi Damp Fork)には作動圧力を任意で調整可能な操作部が備えられており、スズキ・RG500Γや1985年のGSX-R750、海外のGSXシリーズに採用された。圧力変化を電気的に検出してソレノイドで作動するシステムとして、スズキはNEAS(New Electrically Activated Suspension)として、1986年のスズキ・GSX-R750やスズキ・GSX-R1100の限定車に採用した。カワサキでもESCS(Electronic Suspension Control System)として市販車両に搭載した。 なお、かつては原付車両に多かったトレーリングリンク式フロントサスペンション車においてアンチノーズダイブ機構と称しているものは、ブレーキの反作用でフロントが沈み込む現象(リアブレーキを併用すれば防げる)を解消するために、ブレーキの回り止めをホイールアクスルを支持するピボットアームでなく、トルクリンク(トルクロッド)を介してピボットアームの回転(swing:スイング)に関与しないフロントフォークで支持するフローティング構造としたものであり、テレスコピック式のものとは意味合いが異なる。これはリーディングリンク式(ボトムリンクなど)におけるアンチリフト機構とは力の向きが逆になるだけで同じものである。[最近の市販車ではホンダリード50、ホンダリード90、スズキアドレスV50、スズキアドレスV100など]
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