アンチヒーローの設定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/14 04:14 UTC 版)
主人公は原作では1人称の語り手である設定を活かして全編名無しで描写されていたが、さすがに映画で無名を通すのは難しいため、マイケル・ケインとハリー・サルツマンらは「できるだけ『間抜けに聞こえる』名を付けよう」という基準で「ハリー・パーマー」という締まらない名前を考え出した(「ハリー」の名は、話し合いの最初でケインが口を滑らせて思い付いてしまったもので、すぐハリー・サルツマンの名に気付いて取り消そうとしたが、サルツマンはへこみつつも「それでいい」と運命を受け入れた)。 主人公パーマーは、アクションに似つかわしくない黒縁眼鏡を着用、育ちの悪さを露呈させるあけすけな下層階級なまりで、1960年代前期当時の男性としては珍しく料理一切を自分で作り、スーパーマーケットへ買い物に行くような男として描かれている。原作の設定をさらに巧みに誇張した形で、このために当時イギリスでは犯罪扱いされた同性愛者と見られかねなかったことから、その打消しのため、随所でパーマーが女好きであることを強調するような描写が差し挟まれている。 冒頭、諜報員殺害事件の描写から一転してのオープニングタイトルは、ジョン・バリーのミディアムテンポで流れる緊張感あふれるテーマ曲("A Man Alone" の別名があり、劇中繰り返し使われる)をバックに始まる。朝、一人暮らしの安アパートで起床したパーマーが手際よく身繕いし、コーヒープレスで自ら淹れたコーヒーを飲みつつ、下世話な大衆新聞「ザ・サン」の求人欄を鉛筆でチェックする(転職したいという目論見満々の)様子を淡々と描写し、その後のシークエンスでの「適当なサラリーマンぶり、楽に仕事をするための妙な要領の良さ」も含め、エリート・スパイたるジェームズ・ボンドの対極にある等身大なアンチヒーローの姿を、ユーモア混じりに提示した。それだけに中盤以降シリアスなシークエンスでのパーマーのリアルな硬派ぶりが際立ち、ありきたりのヒーローとは異なった個性ある主人公像を作り出すことに成功している。 なお自身も料理が得意なデイトンは、パーマーが自宅で料理をするシークエンスで、ケインの顔が映るシーン以外を代役し、卵を片手で割ってフライパンに落とすなど、料理の鮮やかな腕前を見せている。
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